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記憶の片隅に
【純愛 恋愛小説】

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記憶の片隅に-1

てんてんてまりこいとつく
てんてんてまりゆけとつく
竜田のかわもにうきしずむ
紅葉のころはいつぞやか
てんてんてまりてんてまり
くるりと回って巡りあふ
もいちど回って巡りあふ


目が覚める。まただ。何度目だろう?幼い自分の夢。神社で手鞠をついてるあたし。夕空に響く手鞠歌…
そこまで夢を見たら覚める。いつも同じ所。続きはいくら頑張っても思い出せない。
額を押さえながら、ベッドから体を起こす。時計を見ると二時半。なんだ…全然寝てないじゃない…
喉がカラカラだ。部屋を出て、台所へ向かう。
電気をつけないまま水道の栓を捻り、水をコップに注ぐ。…ああ、ちょっと落ち着いた。
コップを持ったまま窓へ寄る。今夜は新月だ。
 ―早弥(さや)…―
ドキン…。何…?声がした気が…。あたしは周りを見渡すけど特に異変はない。まだ寝足りないから幻聴でも聞こえたのかな…
あたしはソファーに身を沈めた。


「早弥!!ほら、起きなさい、8時よ」
ハッと跳び起きる。あやや…あのまま寝ちゃったんだ。あたしは慌てて学校の準備をした。

「おはようっ」
教室に入り、席に着く。あたしの席は窓側の1番奥。
…あれ?なのに、あたしの後ろにもう一つ机。あたしは首を傾げる。
「転校生らしいよ〜」
親友、叶実(かなみ)がやってくる。
「男の子だって。早弥席近いしラッキーだね」
「そっかな〜」
あたしは苦笑した。

「おら、席に着け〜」
担任のお出ましだ。25才、教師成り立ての麻生先生。サバサバしてて、顔も整ってるから男女共に人気がある。でも叶実は気に入らないらしい。今も口を尖らせて不満をあらわにしている。あたしは思わず吹き出してしまった。
みんなが席につくと、麻生先生がきりだした。
「もう知ってる奴も居るだろうが、今日は転校生が来てる。女子、喜べ。素敵な男の子だぞ〜」
はっはっはと先生は笑い、ドアに向かって言う。
「入れ。名前はな〜、白風銀牙くんだ」
男の子が一人、入ってくる。みんなが息を止めたのが分かった。日に透けるような茶色の髪。切れ長の目。
ふと目が合った。…あれ…?どこかで…

「この髪は自毛だからな、みんな虐めるなよ〜」
先生は白風くんに何か言い、あたしの後ろを指差す。彼は軽く会釈して席に向かって来た。また目が合う。冷たい瞳。…何?恐い…。あたしを横切る寸前、彼が冷たく笑った気がした。
休み時間トイレに行くと、クラスメイトが白風くんの話をしていた。
「ハンサムじゃない?彼。あたし頑張ろっかな〜」
「あたしもっ」
凄いな…あの人。彼女らの隣の空いた洗面台で手を洗う。確かに素敵だけど…あの目…。何気なく鏡をみた。
―…早弥…―
「きゃぁぁっ!!」
あたしは鏡から離れて壁に張り付いた。
「どしたの早弥ちゃん!?」
近くにいたみんながあたしに寄り添う。
「か、鏡…狐が…」
「うそ?写ったの?いないけど…」
「気のせいだよ〜」
違うよ、気のせいじゃない…。確かに白い狐が写ったんだ。そしてあたしを呼んだ…
教室に返ると叶実に話をした。
「ホントなの?それ…」
あたしは頷く。叶実はあたしの頭を撫でながら言う。
「早弥、心当たりないの?狐に何かしたとか、稲荷のお社に何かしたとか…」
あたしは首を振った。そんなことするわけ無いじゃない…。
「とにかく元気出して!次移動教室だし、行こ?」

次は化学の実験だった。先生から実験の説明を受けると、あたし達は実験に入った。と、突然外で雷鳴が轟く。いつの間にか暗雲が立ち込めていた。
さっきの出来事といい、この天気といい、なんだか嫌な感じ…。
―ドォンッ!―
一層大きな音がして地面が震えた。瞬時に辺りが真っ暗になる。明かりはガスバーナーの炎だけだ。
「落ちた?雷落ちたの?」
「うわぉ〜」
みな口々に声をあげている。
「はい、静かに!この状態での実験は危険だから座ってなさい。先生、様子見てくるから」
先生が出ていく。あたしはぼーっと揺れる炎を見つめていた。
―…や…早弥…―
あの声だ。体が強張る。次第にはっきりしてくる声。何?あたしに何の用なの?
―早弥、忘れてしまっのかい…?―
炎が大きく揺らぐ。浮かび上がる狐の姿…。
「いやぁっ!!」
「早弥!?」
叶実の声。助けて、助けて…!トンッと背中に何かが当たった。あたしがよろけたんだと思う。そのままあたしは尻餅を着き、倒れ込んだ。背中に当たったものと一緒に。
「高崎さん、大丈夫?」
後方からクラスメイトの声。どうやら背中に当たったのはクラスメイトの体らしい。あたしはそこで意識を失ってしまった。


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