桜の木の下で-3
「うん、実はえっち系のバイトがあってね。」
「うん。」
「その人自称ライターで、今まで何回か相手したことあるんだけど、まぁ悪い人じゃないのよ。」
「うん、それで何するの?」
「でね、そいつが言うには、『小説のネタにしたいからレズプレイが見てみたい。』って言い出したの。」
「へっ!?」
のけぞるあたしにサチが追い討ちをかける。
「もう頭のいい美樹なら察しついたと思うけど、あたしとレズって欲しいんだ!」
「ええええっ!あたししたことないよっ!?」
「あたしだってないよ!いいんだって、テキトーに感じるふりしとけば!」
「で…でも……」
「頼むよ〜美樹〜!撮影とかそいつ乱入で3Pとか絶対無いって言うし、何かそういう約束絶対守る人だし、何より2人に10ずつ出すって言うんだよ〜あたしちょっと高いヴィトンのバッグが今欲しいからこのバイト受けたいんだよ〜。ね、美樹?あたし、美樹以外とは出来ないよ〜!」
最後の一言にぐらり、と来た。もちろんお金は欲しいけど、あたしもサチとなら……
「ふぅ……分かったよ、サチぃ。他でもないサチの頼みだもん、あたしでよかったら相手するよ。」
「やった、美樹っ!ありがとー!お礼にキスしたげるっ!!」
「きゃっ、ちょっ!あたしその気はないからねっ!?」
「あははっ、あたしだって無いって!!じゃ、早速打ち合わせなんだけど……」
サチに、美樹だけ、て言われたのが素直に嬉しかった。
それに少し言い過ぎがあったとしても、友達がたくさんいるサチに、選ばれた気がして嬉しかった。
でもサチ、あたしサチとなら本当にいいよ……
3日後の土曜日、あたし達は2人と、日村と名乗る自称ライターは街から少し外れたホテルにいた。
「いや〜、高田さん(サチ)に突然こんな話されて驚いたでしょう?」
「えぇ、まぁ……」
横から美樹が口を挟む。
「ね、日村さん。約束分かってるよね?あたし約束破ったりしたらマジ許さないかんね?」
「分かってるよ、高田さん。僕は本当に物書きの参考にしたいだけだから。ほら、何も持ってないでしょ?」
「ま、日村さんが変なことするとは思わないけどさ。ベッドの上でもチョーマジメだもんね?」
「ううんっ(咳払い)……まぁ、それは置いといて……早速始めてくれるかい?僕はこっちのソファに座ってるから。」
「だって、美樹。いこっ。」
「う、うん。」
あたしは美樹に手を引かれてベッドに座る。
「美樹……緊張してる?」
サチがあたしの髪を撫でながら囁いた。
「う、うん。そりゃ……少しは……」
「あたしに任せて……」
サチの顔がすっと近づく。あたしは反射的に目を閉じた。
「あ……」
サチの唇が優しくあたしの唇に触れている。そして、男の人がそうするように自然に舌が侵入してきた。
「んん……」
優しくあたしの口の中を舐めまわすサチ……あたしも一生懸命サチの舌に応える。
何年かぶりのキスの感触、それは頭の後ろがピリピリ痺れるような感覚。キスってこんなにドキドキしたっけ……胸が苦しい……。
「んふぅ……」
やっと唇が離れた。名残惜しそうに2人の舌の間に糸を引いている。
「真樹、かわいい……」
サチもうっとりした表情で、もう仕事の顔という感じではない。