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桜の木の下で
【学園物 官能小説】

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桜の木の下で-18

「……わかった。ただし、条件がある。」
「ありがとうございます、条件って何ですか?」
「もう夜で一人歩きは危ないから、迎えにいかせて。家はどこ?」
「あ、えっと……。一人で大丈夫ですよ?」
「いんや、僕がダメなの。」
「わかりました、ありがとうございます。」
「決まりね。じゃあ、住所教えて……」
「えっと、……」



30分。たった30分が5時間にも6時間にも感じた。
頭の中をもし、嫌いになられたらどうしようとか、これで会えなくなるかもしれないとか、不安が錯綜する。あたしは、膝にこぶしをおしつけて、必死に自分自身を制御する。
やがて遠くからエンジン音が聞こえ、自分の家の前で停まった。
「ついたよ。」
たった5文字のメールが、あたしの心を激しく掻き乱す。
「がんばれ、あたし!」
そう呟いて、こっそり階段を降り、ドアを開ける。鍵を閉め、ダッシュで車の助手席に乗り込んだ。
「はぁ、はぁ……」
緊張と今のダッシュで胸が苦しい。まともに先生の顔を見ることもできない。
「大丈夫?どこに行こうか。」
「あ…あの、二人になれるならどこでもいいです。」
「そうだねぇ、大事な話みたいだから、完全プライベート空間ってことで僕の家にしようか。」
「え、いいんですか?」
嬉しい、先生の家に行けるなんて。
「ただし、男の一人暮らしだからね。そんなにきれいじゃないよ。」
「全然大丈夫です!」
先生の部屋は思ったより整頓されていた。壁際に設置されたベッド、ソファ、テレビ、タンス。そして1Kの部屋の真ん中にあるコタツ。確かにちょっと狭いけど、これはこれでまとまっている。
「意外ときれいですね……」
「そうかな?まぁ、一応パパっと片付けたんだよ。」
先生のことを意識してしまってから、あたしは前みたくタメ口では話せなくなってしまっている。
でも、先生は至って普通……きっとあたしは教え子の1人に過ぎないんだろう……こんな状態で想いを伝えたところで成功するわけない……
けど、だけど……ここでひいたらきっと……いや、絶対後悔する。
「まぁ、どこでも座ってよ。」
「あ、はい」
あたしはソファに腰を下ろした。
「ん、そこに座る?じゃあ……」
先生もソファに座った。50センチくらいの距離。あたしの心音はひょっとして先生に聴こえてしまっているんじゃないか……でも、話をする時相手が正面にいるより横にいる方が話しやすい、て昔先生は言ってた。もしかしたら、先生はあたしが話をしやすいように横に座ってくれたのかもしれない。
先生は、無言であたしを見つめて、待ってくれている。
「あの……」
「うん。」
「あたし、バイトが苦しい、て話しましたよね。」
「あぁ、頭機械にしなきゃいけないってやつ?」
「はい……」
声が掠れる。あたしの心からの告白、受け止めて……お願い……
「あれって、実は……」
「うん。」
「お……男の人からお金を貰うバイトだったんです。」
「!?」
先生の細い目が大きくなる。そりゃ、そうだ……先生からすれば教え子の衝撃発言のはず……
「あ、でも、その口だけで、体とか触られてないんですけど……」
何を言い訳みたいなこと言ってるんだろう、あたし。先生にとってそんなことはどうでもいいことなのに。
「……そっか。」
さすがに先生はショックを隠しきれない、と言った感じだ。先生が言葉を続ける。
「でも、なんでそれを先生に言ってくれたんだ?苦しい告白だろうに……。」
さすが先生。あたしを言下に見下したりはしない……認めるところを見つけてくれるんだ。
「はい、それで……でもそのバイトがすごく苦しくなっちゃったんです。それしてる時って本当に頭機械にしないとできないんですけど……」
ヤバい、涙出てきた。でも、最後まで言わないと……
「どうしても、できなくなって……頭機械にしようとしても、先生のこと……考えちゃって……あたし……」
そこまで言って、あたしはもう言葉が出なくなってしまった。
言葉を出そうとしても嗚咽しか出てこない。後二文字……先生に「スキ」とだけ伝えたいのに……


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