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桜の木の下で
【学園物 官能小説】

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桜の木の下で-17

「美樹、あんた今これやめたらあたしと仲悪くなるんじゃないか、とか考えたでしょ?」
「えっ!?何でわかるの?」
「顔に書いてんのっ!この顔に!」
美樹はそう言ってあたしの頬をつまんで引っ張った。
「あ、いたたたたっ!痛いよ、サチっ!」
「痛くないっ!美樹、あたし達はねぇ……あたし達は一緒にエンなんかしなくっても、もう親友なんだよ!」
「サチ……」
サチの瞳は少し潤んでいる。
「美樹、そんなこと心配せず、もうエンはやめな……だって美樹、あんたその長野先生って人、好きになっちゃったんだろ?」
ドクンッ!
あたしの心臓が大きくひとつ鳴って、その後動悸が激しくなる。
ドッドッドッ……
体中が心臓になっちゃったみたいだ……
あたしが、口にできなかった言葉が、サチの口から飛び出してきた。
あたしの目からはまた涙が溢れ出し、あたしは黙って何度も頷くことしかできない。
そう、そうだ……そうなんだ……あたしは長野先生のことが好きなんだ。
「だって、エンは頭空っぽにしなきゃじゃん。誰かを好きになっちゃったら、お金のため……て割り切れないっしょ?」
「……。」
言葉が言葉にならない。
サチもあたしと同じ想いを抱えてたんだ……あたしだけが苦しい思いしてたわけじゃなかったんだ……あたしは……独りぼっちじゃなかったんだ。
「サチ、ありがと……」
あたしにはそれを言うのが精一杯。泣きじゃくるあたしの頭を、サチが優しく撫でてくれた。
そうやってしばらく時が流れた。
泣き止んだあたしの耳元で、サチが囁く。
「だから、自分の気持ち伝えておいで!小学生の時に言えなかった分の気持ちもこめてさ。
大丈夫、万が一美樹がふられたらあたしが付き合ってあげる!」
こんなときに力強く、冗談まで言えるサチってすごい。本当に、サチと出会えて良かった。
「サチ……ありがと。本当に、ありがと。」
伝えよう、あたしが小学生の時、伝えられなかった気持ちと、今の気持ちを。




<11.告白>
その夜、あたしは先生に電話をした。
「もしもし?」
「し…島川です。」
「あぁ、島川さん。どうしたの、こんな夜中に。」
「あ、あの……」
言葉が言葉にならない。小学生の時の引っ込み思案の自分に戻ってしまう。あたしは視線を下に落とした。
(☆がんば☆)
あたしの手の甲にはサチが書いてくれた丸い文字。
そうだ、あたしはもう弱いだけのあたしじゃない。少しは社会経験も積んできた。親友ー心友と呼べる友達もできた。
大丈夫…
大丈夫…
大丈夫…



よし。
「どうしても話したいことがあるんです。今から会えませんか?」
自然に敬語になってしまう。
「今から?」
少し驚いた先生の声。それでも私は引かない。
「はい。」
「でも、おうちのかたもいるんじゃないの?」
「親は大丈夫です。」
それは嘘。一度夜遊びがばれた時は大目玉をくらった。
ただし、
「あんたがそんなことしたら私たちが世間様から後ろ指をさされるのよ。」
という、あたしを思っての叱責ではなく、自分たちの保身を考えての叱責だった。
こっそり抜け出そう。あたしは時計を見た。夜の10時。親はもう寝ている時間だ。


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