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伊藤美弥の悩み 〜受難〜
【学園物 官能小説】

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恋人達の悩み5 〜MEMORIAL BIRTHDAY〜-8

 腋の下に手をやって、美弥を力任せに引き上げる。
 ちゅぼっと音がして、口から肉棒が引き抜かれた。
「ん……」
「分かりましたよ。いたしましょう」
 龍之介は、美弥を組み敷く。
「んふ」
 満足そうに喉を鳴らす美弥に、龍之介はキスをしようとした。

 がちゃっ

「美弥。もうそろそろ起きいいいいいいいっっっ!!?」
 まるで計ったかのようなタイミングで、直惟が部屋に顔を出す。
「お、おま、おま、お前は……!!?」
「あの、いや、これは……!」
「お……お父さん!」
 あぅあぅ言っている直惟に、美弥はきっぱり言った。
「私が龍之介を誘ったの!龍之介は悪くないわ!」
 だがそれは、直惟の神経を逆撫でしてしまう。
「いくら誘われたからって、よくも娘をーーーーっ!!」

 ばかんっ!!

 取り乱して叫ぶ直惟が、いきなりくずおれた。
「朝っぱらから叫ばないでちょうだい。ご近所迷惑でしょ」
 夫の後頭部に陶器製のトレイを振り下ろして沈黙させた彩子は、落ち着いた口調で説教する。
 どうやら、直惟の悲鳴を聞き付けてやって来たらしい。
「美弥、あんたもあんたよ。彼氏をベッドに引っ張り込むなら、部屋の鍵くらい掛けておきなさい。直惟さんがあんた達の事を面白く思ってないの、気付いてるでしょ?仲を引き裂く口実を与えてどうするのよ」
 美弥は返す言葉もない。
「あ、それと……彼氏」
 呼ばれた龍之介は、びくっと飛び上がった。
「は、はいっ!?」
「何があっても、二度と美弥を泣かせないようにね。もしも泣かせたら、あたしはもう味方にはなり得ないと覚悟しておきなさい」
 それだけ言うと、彩子はドアを閉める。
 ずるずるという音から察するに、どうやら直惟を引っ張って行ったらしい。
「……あ〜」
 またしても、こんな現場を彩子に見られてしまった。
「……美弥」
「な……何?」
「もう……寝ないで、眠りましょう。」
「……ハイ。」


 数日後。
 再びバイトの日がやって来た龍之介は、嫌々ながらもバイト先のファミレスに足を向けた。
 ロッカールームにて制服に着替えていると、紘平がやって来る。
「……」
「……」
 どういう対応をするべきかと思って体を硬直させる龍之介に対し、紘平はにぱっと笑いかけた。
「久しぶり。今日もよろしゅうに」
「あ……よ、よろしく」
 しどろもどろの龍之介を見て、紘平が吹き出す。
「何や龍やん、俺と一緒は嫌やのん?」
 龍之介は肩をすくめた。
「原因……美弥から聞いたし、見た」
 ロッカーを開けて着替えを始めようとしていた紘平は、龍之介の言葉に動きを止める。
「なあ、龍やん……それ、あの美弥から一発で聞き出したんか?」
 変な質問に、龍之介は目をぱちくりさせた。
「そうだけど……」
 その言葉に、紘平はため息をつく。
「……さよか。龍やん、えらい信用されとるなぁ」
「え?」
「俺の知っとる伊藤美弥はな、誰とでも仲良うできる反面、親を頭にしてほんと〜に一部の人間にしか心を見せん女やった。うまーく隠しとったけどそれは幼馴染みの俺かて同様で、俺らの仲違いの原因なんて込み入った事を聞き出すなら、俺なら最低でも三回は拝み倒してようやく聞き出せるかどうかってくらいのもんやった。それを一発で聞き出せるんやから、龍やんはほんっとーに信頼されてんねん」
 紘平は、ぱたぱた手を振った。
「万が一美弥に男がいたら寝取り返す気で戻って来たけどな、そこまで信頼されとる男からはさすがに無理やろ。正直言うて悔しいし納得のいかんとこもあるけどまあ、しゃあないわ」
「紘平……」
「美弥が龍やんに傾いた原因は、俺にあるんやしな。あの写真、見返すと千春が俺にべったりくっついとるやん?あ、千春は大阪で仲良うなった女の名前や」
「うん……」
「俺は大丈夫やろ思て送ったねんけど、美弥にしたら大ショックやったんなぁ……まあ、あれやったら浮気と取られても文句は言えへん」
 紘平は、にぱっと笑う。
「せやから、俺に遠慮はいらん。美弥と仲良うやってや」
「……うん」
「ま、幼馴染みとして誕生日プレゼントの一つも贈らして貰おうかと思ってんねんけど、それは構へんやろ?」
 やっぱり知っていたかと思い、龍之介は喉を鳴らした。
「……ご随意に」


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