陽だまりの詩 13-5
くっそ、やきもきするぜ。
男ならスパッといけや。
まあそれにしても…約束のためにキスなんてものを断るとは、やっぱり小僧は小僧だな。
おもしれえぜ。
「あ、奏は私がフォローしておいたので誤解は解けてると思います」
妹も苦労してるな。
「……ってことは、やっぱり小僧次第じゃねーか」
「…そうですね」
「……いっちょ目ぇ覚ましてやるか」
俺はゆっくりと立ち上がる。
「……ありがとな」
「……いえ」
俺は肩を回しながら病室を出ようとした。
「待ってください!!」
「あ?」
振り返れば妹が目の前にいた。
そして頭を深く下げて言った。
「兄貴を…もう殴らないでください!」
「……」
「兄貴はバカだし、気に入らないのもわかります!でも、兄貴が殴られているのはもう見たくないんです!」
「……」
小僧は本当に愛されてやがるな。
いや、小僧が頑張ったから今があるのか。
俺はこの瞬間、あることを決心した。
「殴らねーよ」
妹、俺は誰にも言わないがな。
もうすっかりあの小僧がお気に入りなんだよ俺は。
やっぱり今はもう、あいつ以外に奏を任せることは考えてねえ。
そのためには、やっぱりあの小僧の目を覚ましてやるしかねーのな。
「殴らねーから安心しろ」
「は…はい」
妹はきょとんとしたまま俺を見送った。