投稿小説が全て無料で読める書けるPiPi's World

陽だまりの詩
【純愛 恋愛小説】

陽だまりの詩の最初へ 陽だまりの詩 92 陽だまりの詩 94 陽だまりの詩の最後へ

陽だまりの詩 13-6

***

意を決して病院に訪れたが、玄関には思いがけない人物が立っていた。
今日は作業着ではなく私服のようだ。

それにしても、あの人はいつも俺を待っているのか?

近付くと、お父さんも向かってきた。

「……お久しぶりです」
「……」
正直、立ち向かう勇気など今の俺には持ち合わせていない。

「小僧、ついてこい」
「……」

いつだったか、二人で言葉を交わした場所に赴いた。
今日も人はいなかった。

早速、お父さんはタバコに火をつける。
「小僧、お前は奏のことが好きなんだな?」
「……」
相変わらず直球だな…
「どうなんだ」
「……好きです」
「どのくらい」
「…っ」


俺はどのくらい…好きなんだ?


「小僧!!」
すごい声だった。
「…はい」
「てめえが奏のことをどれくらい好きなのかは知らないがな……この俺から奪う自信があるほど好きなんだろうが!」


ハッとした。

そうだ。
奏と幸せになるためなら、お父さんとだって戦ってやる。

そんな強い気持ちを持っていたのに。

なんでこんなところで立ち止まっているんだ。

なんで奏をどれくらい好きかくらいで迷っているんだ。


俺は奏のために立ち止まることなく走り続けなきゃいけないんだ。

じっとお父さんの顔を見る。

この人は…なんていいお父さんなんだ…


「……奏は俺がもらいます」
そう声を絞り出した。
「……」
「奏を愛している気持ちは、お父さんには負けません」
「……くく」
お父さんは声を押し殺して笑った。
「それでこそ小僧だ。行ってこい!」
「はい!」
俺は走り出す。
「春陽!!」
「っ!?」
聞き慣れない呼び名に驚き、後ろを振り返る。
「奏を頼むぞ」
「……はい」


俺は笑いながら走った。

奏のところへ。


陽だまりの詩の最初へ 陽だまりの詩 92 陽だまりの詩 94 陽だまりの詩の最後へ

名前変換フォーム

変換前の名前変換後の名前