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闇よ美しく舞へ。
【ホラー その他小説】

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闇よ美しく舞へ。 7 『霊が見える』-2

「はははぁ! いーよいーよ別に。俺は一人で回るから、そのほうが気が楽でいいや」
そう見栄を張る皆藤も、どこかちょっぴり寂しそう。
「そうだ皆藤。おまえ龍神(たつがみ)さんを案内してやれよ」
「龍神さん?」
「ああっ。彼女も組む相手が居ないんだってよ」


 そうそう此処にもう一人、なにやら薄気味悪いと嫌がれて、一人ぼっちの女子が居た。
『龍神 美闇(たつがみ みあん)』言わずと知れた、この物語の主人公でもある。
 どうやら美闇、本当はこんな馬鹿げた騒ぎに付き合うつもりは無かったらしいのだが。調子に乗った女子連中に、
「ねえねえせっかくの肝試しなんだからさ、そういう雰囲気に有った子を誘った方がおもしろくない」
 とかなんとか言い出され、普段からあまり友達付き合いの無い陰気な女子の候補として抜擢(ばってき)されるや、他の『あんた達ってば雰囲気暗いよ! 的女の子グループ』の一員として、むりやり肝試しに参加させられたらしい。
 まあ正直言ってしまえば、積極的で活発な女の子連中が、好きな男の子とペアを組んだ後の、余ったどうでもいい男子連中用の、宛ゴマ要員だったりもする訳である。
 無論そんな事はお構いなく、もてない男達としては、そんな女子だって大歓迎! 一時の甘い夏の夜が過ごせればと、張り切って彼女達をエスコートもしていたことだろう。
 中には本命彼女の我が侭ぶりを持て余し、美闇のような静かな子と組みたかった! そう言いたげな男子も居たようではあるが、なかなか思惑どうりには、いかないのも世の常である。


おっと、そんなことはどうでもいい話として置くとしよう……


 結局のところ、美闇と皆藤、『恐怖の怖いもの知らずペア』は、イベントのフィニッシュを飾るべく最終組スタートとなった様子である。
 校舎脇に有る非常用出入り口をこっそり開けて、中に入ると見渡す限りまっ直ぐに伸びる一階の廊下が目に入って来る。
 普段なら何の変哲も無い廊下ではあるが、夜中ともなればやはり雰囲気も違ってくる。
 昼間は気にならない非常灯の薄明かりも、火災報知機の赤ランプが放つ異様な赤い光も、なんだか丸で、地獄へ続く回廊へと誘う、アヤカシの灯火(ともしび)の様でもあり、確かに薄気味が悪い。
 そんな中、美闇と皆藤、二人はおしゃべりをする訳でもなく、ましてや手など繋ぐ訳でもなく、暗闇の中を靴音だけを残して、通り過ぎて行った。
 廊下の端までやってくると、今度は上層階へと続く階段を上がり、2階の廊下をゆっくりと歩き切る。
 どうやらそうやって、3階、4階と練り歩き、最後に屋上までたどり着いたら、屋上を囲ったフェンスの端に目印にと持ってきた鉢巻を括り付けて、後は非常階段を伝って下まで降りて終了らしい。
 当然、途中の教室には脅かし役の男子生徒も居た訳であるが、こと最終組である美闇と皆藤のペアに至っては、最早彼女等を驚かそうなどとする者は、すでに居ない様子であった。
 実際、驚かしたところで、ネタバレしている皆藤には通じないし。美闇に至っては、逆に雰囲気が薄気味悪いと、正直関わり合いには成りたくなかったらしい。先に肝だめしを済ませ、すでに帰ってしまった男子女子も居た。


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