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闇よ美しく舞へ。
【ホラー その他小説】

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闇よ美しく舞へ。 7 『霊が見える』-1

「俺には見える! ほらあそこに鎧武者の格好をした霊の姿が!!」

 たいがい一人ぐらいは居るものである。
 有りもしない物が見えると自慢して、周りの人達の気を誘う者が。
 特に夏になると、そう言うことを言い出す者が、突然現れたりもする。
 だがもし、本当にそういったものが見えてしまうと言う人間が居たとしたら、ある意味その人は、不幸なのかも知れない。


「すっげえよなあ、皆藤(かいどう)。本当に幽霊とかが見えるんだな、おまえ!」
「それほどでもないさ」
 人より秀でた才能があり、それを誉められると、人として、それは嬉しいものでもあろう。『皆藤』というこの男子生徒も、この時ばかりは得意満面であった。
「なあ今度、肝試し(きもだめし)やんねーか」
 幽霊とか怪談とかの話しが出たりすると、たいがいこう言った場合、『肝試し』そんな事をしたくなるのも人情だろう。男子生徒の強者(ツワモノ=これは造語です)達は、どうやらそんな事を企画しはじめた様子である。
「どうせやるんだったらさ…… 女子も誘わねぇ!」
 そして、必ずこう言い出す者がいる。
「良いねぇ! それっ!!」
「男女ペアで肝試しに挑戦! そうしようぜ! なっ! なっ!!」
 話しがこうなるのも、お約束。
 結局、怖いもの見たさの肝試しがやりたかったのか、或は、ただ単に、日ごろなかなか御付き合い願う事の出来ない女子に、この時ばかりは合法的にも声を掛ける事が出来るとあってか、男供としてはハリキリざるを得ない。戦略的にも『この期に乗じて、彼女をゲットしちゃおうか作戦』の一端だったりもする。
 結局、幽霊見たさの肝試しのはずが、いつしか合コンとも言うべき、夜の複数男女によるグループ交際イベント、そんな話題に華が咲いたりもするのだった。
 無論そう言った事に女子も敏感であっただろう。中にはノリノリで、さっそく誰と誰がペアになるとか、「俺は君と組みたい!」「あんたとは絶対に嫌っ!!」とか、本音の声がチラホラともなく、聞こえてくるものだ。
 かくして、『天才高校生霊能力者、皆藤くんと行く心霊スポットツアー』の申し込み者は順調に数を伸ばし、Xデー(えっくすでー)はどうやら今度の土曜日の深夜に、決行されることと相成った。


『天才高校生霊能力者、皆藤くんと行く心霊スポットツアー』
 大げさなお題目を掲げたところで、所詮は高校生の企画したイベントである。観光バスを連ねて、山奥のお寺を回ったり、廃墟と成ったいわく付きの『元病院跡』なんて所を観光するようなことは、間違っても出来るわけも無く。結局これもお約束、夜の学校へと集まって、真っ暗な校舎の中を順番に、懐中電灯の灯りを頼りに一回り。終わったところでそれぞれ解散。ってな事をするだけで精一杯である。
 それでも男子女子と20人からの人が集まって、10組のペアが出来る程である。そうして1組ずつスタートすると、懐中電灯をバトン代わりに、次のペアがスタートする。
 気が合う者同士は仲良く手を繋ぎ、すでに付き合ってる者達は肩寄せ合って、そうでない者達は弩付き合いながらも、薄暗い校舎の中へと消えて行く。
 まあこれもよくある話である。


「ところで皆藤とは誰が組むんだ!」
「怖いからあたしは嫌っ!」
「だって皆藤くんって…… 幽霊とかが見えるんでしょぉ〜。キモイよそれぇ」
「おい中村! おまえ女子の中じゃ一番強いんだろ! おまえ皆藤と組め!!」
「嫌よ! あたしだって怖いもん! 望月くんが組めじゃいいじゃない!!」
「ばか俺は男だぞ! それに俺は典子ちゃんと……」
 まあ、こうなるのも当然と言うか、普通だろう。
 普段は幽霊が見えるだの、霊感があるだのと言って、人に羨ましがられていたとしても、こういった時にマジに幽霊なんぞに出っくわすのは誰だって御免こうむりたいに違いない。ましてや今日は肝試しと言うよりは、日ごろ恋焦がれる女子とのツーショット。中にはそうでないペアも居た様だが。そんな楽しい一時を、幽霊なんかに邪魔されたくは無い。


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