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陽だまりの詩
【純愛 恋愛小説】

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陽だまりの詩 12-2

***

「で、何しに来たんだ?」
「見てわかんないの?」
「お見舞い?」
「正解」
「やべえ、今死ねる」
「……」
美沙はため息をつきながら溜まった洗濯物をたたんでくれている。
「なあ美沙」
「なに?パンツはたたまないわよ?」
「いや…そうじゃなくて…」
久々にショック。
まあ、前からたたんでもらえなかったけど。
「なによ」
「ひとつ、すごいつっこみたいんだけどな」
「ん?」
美沙は気付かないふりをしている。わかっているくせに。

「奏、歩いてきたのか?」
奏は立っている。
今はキッチンで濡れタオルを用意してくれているらしい。

「杖を使ってなんとかだけどね。アキさんが、少しずつやってみなって」
よく見れば、左腕には肘につけるタイプの杖があった。
「って、少しずつじゃないじゃないか」
病院からこのアパートまでは結構歩かなくてはいけない。
確かに普通に歩ける距離ではあるけど、奏にはきつかっただろう。
「二時間かかっちゃった」
その言葉に唖然とする。
「お前らが風邪ひかないか心配になってきたぞ…」
「まあ大丈夫でしょ。それにしても久しぶりだわ」
美沙はしばらくアパートに帰っていなかったので、盛んに辺りを見回している。
「あっ!兄貴!またあたしのタンス漁ったりしてないわよね!?」
「またってなんだよ!したことねーよ!」
「また喧嘩ですか?」
奏がタオルを冷水に浸したボールを持って近づいてくる。
かなりゆっくりだが、やはり間違いなく歩いていた。
「なっ!なんでもない!」
「…そうですか」
「ちっ」
「ちっ、じゃねーよ!」
あ、やばい、大声でつっこみすぎてフラフラしてきた。
「悪い、横になる」
「…大丈夫ですか?」
視界いっぱいに奏の顔が映る。
「奏こそ大丈夫か?こんなとこまで歩いてきて」
「はいっ!それより春陽さんが心配でしたから」
えへへー、とふにゃふにゃした笑顔を見せる。
なんか久しぶりにこの顔を見た気がするな。
「ありがとう」
俺は笑って頭を撫でてやる。
「美沙もありがとうな、これだけで元気出た」
ガチャガチャと台所で物音を立てている美沙にもお礼を言う。
「………あたしが奏を連れてきたんだからね!感謝してよ!」
美沙は背を向けたまま言った。
「おう」

奏はゆっくりと座ると、タオルを搾ってくれている。


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