桜が咲く頃〜疑問〜-1
ここは大笑(おおえ)。
沢山の人が集まる街。
この国の中心部。
それは、偶然だった。
今、庭にある木に登って街を眺めている人物。
名前は鈴(りん)
小柄で、手足は細いのに剣術は強い。
いつも男物の服を着て、自分のことを、俺と呼ぶが、女である。
ちなみに鈴とは、以前仕えるていた主が付けた名である。
鈴は今、山村矮助(あいすけ)という人物の護衛をしている。
矮助とは、この国の中心人物、福永家に古くから仕える名家、山村家の次期当主である。
ある日、矮助は鈴が女だということを知る。
その後鈴は、風邪をひいて寝込んでしまった。
そんな鈴を看病していたのは矮助。
鈴はそのことに気付き、はじめは警戒していたが、次第に心を開いていく。
矮助の看病のかいあって鈴は元気になり、屋敷を出て行くと言ったとき、矮助は鈴の看病代(宿泊代、食事代、薬代等々)満金30枚を請求した。
鈴は、一度は憤慨したものの、世話になったのは事実、と払うことに決めたとき、財布がないのに気付く。
払えないのを知った矮助は、1日満金1枚で鈴を雇おうと提案をする。
ところで、鈴の財布がどこに行ったかというと、実は、矮助が隠し持っている。
なぜなら、こうすればよその護衛として働き、その間女だとばれないよう気を使う必要はないという矮助の思いやりなのだ。
また、矮助の鈴と離れたくないという想いも含まれている。
しかしこの思い、鈴はまだ知らない…
話を戻して
鈴は珍しく木に登った。
この屋敷に来てからは自分専用の部屋を貰い、一人でいられる時間が十分にあったので、木に登る必要がなかった。
しかし、今日はあまりにも天気が良かったので、久しぶりに屋敷にある一番大きな木に登り、街を見ていた。
そのとき、屋敷の廊下を二人の女性が話ながら歩いて来た。