陽だまりの詩 11-7
奏はすごくいい子だった。
でも、アキさん以上に悔しかった。
よりによって、同い年の女の子を兄貴が好きになるなんて。
しかも、歩けない奏はあたし以上に兄貴を振り回している。
そんなハンデを背負っているのに、あたしは何もかも奏に負けているような気がした。
奏に出会ってからは、兄貴はいつも奏のことを考えていた。
三人で時間を過ごすことも多くなった。
でも一番辛かったのは、兄貴が奏のところに行っている時だった。
今まで兄貴と二人でいた時間が無くなっていった。
夏休みが終わっても帰りたくないと、兄貴にいじけてみた。
これであたしが帰れば、兄貴は奏のためだけに病院に行くことになる。
それだけは嫌だった。
でも、理由はもうひとつあった。
こっちのほうが重要かな。
兄貴、あたしね、最近よく胸が痛くなるの。
動悸が激しくなることも増えた。
とても嫌な予感がしてるの。
診察で、主治医の先生に言われた。
冬に手術をすると。
実は今も恐いの。
その思いに気付いてくれたのか、仕方なくなのかはわからないけど、兄貴は理解してくれた。
こうして一番嫌な状況は免れたけど、やっぱり兄貴と奏が二人でいるのを見ると辛かった。
兄貴と奏のお父さんがもめたときも、あたしは笑ってごまかしたけど、本当は殴られた兄貴を見て泣きそうになった。
兄貴に奏を諦めてほしかった。
でも兄貴は逃げなかった。
それを見て、あたしはやっぱり兄貴と奏を応援することにした。
兄貴の気持ちは本当なのだとわかったし、何より二人は本当にお似合いだったから。
あたしたちは兄妹。
あたしは兄貴の妹でいれるだけで幸せなんだ。
それからはそう思ってやり過ごしてきた。