陽だまりの詩 10-6
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「みぃーちゃーん」
「キモイ」
俺の熱い抱擁をさらりとかわされる。
「いやー、最近かまってやれなかったから」
「別に兄貴にかまってほしいなんて思ってないわよ」
美沙は、ベッドでうずくまる俺をじろりと睨む。
「少しは奏のお父さんとの関係がうまくいったからって調子乗らないほうがいいわよ」
「なに、嫉妬してんの?」
「誰に」
「奏に」
「……兄貴、さすがにひくわ」
「……」
美沙は雑誌を読み、俺はテレビを見る。
奏と出会うまでは、面会時間が終わるまでこうやって二人でずっと一緒にいた。
「兄貴さ…」
「ん」
美沙は雑誌を閉じると、俺を見つめてくる。
まだまだあどけない顔だが、上目遣いで見られるとたまに女を感じさせられる。
まったく、あの小さくてうるさかった美沙も大人になったもんだ。
「…話聞いてた?」
「あ、すまん」
いつの間にか話していたらしい。
「もう!あと一回しか言わないからね」
「おう」
しかし美沙は押し黙る。
「……っ」
「……」
「もし奏と出会わなければ」
ん?美沙、どうしたんだ?
「もし、アキさんと再会しなかったら」
美沙の顔はみるみる赤くなる。
「あたしと付き合ってくれた?」
「……」
美沙は上目遣いで見つめてくる。
「な、に言ってんだ。俺たちは兄妹だろ」
「……」
「でもそうだな、もし美沙と血がつながってなかったら付き合ってもよかったなー」
「……っ」
「お前もいい女になったし、俺のことを一番わかってるのは美沙だからな。はは」
このとき俺は、笑ってさらりと流した。
だが、このとき美沙は最後まで真面目な顔していたんだ。