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陽だまりの詩
【純愛 恋愛小説】

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陽だまりの詩 10-4

「……」
なんか、さっきから全然恐くないんだが。
今までのインパクトが強すぎて、なんか気持ち悪いぞ…

今までの殺気は微塵も感じない。


もしかして、素はこんな感じなのか?
なるほど、この人も奏そっくりじゃん。

「まあ、なんだ…正直に言うとな」
またも突然勝手にしゃべりだす。
「はい」
「今日はお前に会いに来た」
「え?」
やっぱりボコられる…
「……」
「……」

長い沈黙。
やっぱ気まずい…

「奏、立てるようになったんだな」
「あ、はい」
奏に会って聞いたのだろう。
いつの間にか行き違いになったのだろうか。
「奏は、またお前のおかげだと言っていたぞ」
フゥーと口から煙を吐き出して言う。
「…それは違います」
「あ?」
「俺は勧めただけで…行動に移したのは奏ですから」
「…」
「それに…お父さんは、奏がいつかリハビリを始めるときのために昔から準備してたそうじゃないですか」
「…」
「俺は何もしてません。お父さんと奏の力です」
「…」
お父さんは無言のまま別のポケットから携帯灰皿を取り出して吸い殻を入れた。
「わかってるじゃねぇか、小僧」


何が言いたいんだ!


…と言いたいのをグッと堪える。

「いやな、小僧が全部自分の力だと自惚れているんじゃねえかとな」
「……」

試されたのか。

そういえば初めて会ったときも、“試してる”とか言っていたような。

「どういう手を使ったか知らんが、奏をあっさり落としたもんだから調子に乗ってるかとばかりな」
ちょっとムッとくる。
「…そんなことないですよ。それに奏と付き合っているわけではないですし」
「……」
「奏と約束しているだけです。歩けるようになったら付き合おうって」
お父さんは見計らったのか、携帯灰皿を俺に向けて差し出してくれる。
俺は頭を下げて吸い殻を入れた。

「……」
「……」

また無言。

気が合わないな…

「小僧」
「はい?」
「話が進まないからこれだけは言っておく」
「……はい」
「普通ならこんなこと絶対に言いたくないんだが、母さんに怒鳴られたからな」
あのお母さんでも怒鳴るのか。

こりゃやっぱり奏も将来は尻に敷いてくるな…


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