初恋のハジメ方 act.2-3
「もうこんな時間だ! 長いこと付き合わせごめん!」
ふと時計を見た優人が驚いたように言った。話し込んでいる内にずいぶん時間が経ってしまった。
「いえ、楽しかったですし元々私が誘ったんですから気にしなでください。」
柚子は今日何度目かわからない彼の謝罪をまた断った。そしてお店を出て再び駅に戻った2人は電車を待っていた。
「今日は付き合ってもらって楽しかったです。ありがとうございました。」
「いえ、こっちも楽しかったし、こっちこそありがとう。」
電車に乗り込み、柚子は優人に今日のお礼を言うと彼もお礼を返した。彼も自分と同じように思ってくれているとわかって柚子は嬉しく思った。
「そうだ!携帯かしてくれない?」
いきなり思いついたように言い出した優人に不思議に思いながらも柚子は素直に彼に携帯を渡した。すると慣れた手つきで渡されたそれを操るとどこからか着信音が鳴った。
「はい、ありがとう!」
携帯を返した優人はすぐに自分のそれを操り始めた。すると今度は柚子の携帯が鳴り出した。見ると知らないアドレスからのメールだった。そこでようやく一連の行動の意味がわかり彼を見た。
「それ俺のアドレスね! もしかして迷惑だったかな?」
困ったような顔をする優人に、
「そんなことないです!登録しておきますね。」
と柚子が笑いかけると彼も安心したように笑った。
「よかったぁ〜! 迷惑ですとか言われたらどうしようかと思ったよ!」
本当に嬉しそうに笑う彼に柚子は年相応なものを感じた。大人っぽい雰囲気の彼のそういった一面が見れて柚子はなんだか嬉しくなった。
彼と別れてから柚子は一人帰路についていた。その手には携帯が握られていた。
彼との繋がりが1つ出来た。そのことが嬉しくて柚子は一人携帯を大切そうに抱きしめた。
(明日から朝の電車遅くしようかな……)
そんなことを思った柚子だった。
…To be continued