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初恋のハジメ方
【初恋 恋愛小説】

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初恋のハジメ方 act.3-1

Act.3

柚子はあれから朝の電車を数本遅らせて優人と一緒に通学するようになった。最初は迷惑ではないかと心配した柚子だったが、彼は嫌がる様子もなく、いつも自分を迎えてくれてたので、今では安心して同じ電車に乗っている。
電車もまだピーク時前なのでそれほど混み合っていなくて、たいした苦もなく通えている。
そしてなにより毎日彼と交わす会話が、内容こそ取り留めのないものだが柚子にはとても楽しかった。


―――2人が共に通うようになってからしばらくたったある日、いつもの様に柚子がいつもと電車に乗り込むと優人は難しい顔をして教科書を開いていた。

「もうすぐテストなの?」

最初でこそ敬語口調が抜けなかったが今ではすっかり普段通りの口調になった柚子が尋ねた。

「そうなんだよね。 いつもならテスト勉強なんかいらないんだけど、今回は色々あってテストで赤点取ったら補習なんだよね 汗」

読んでいた教科書を閉じると困ったように優人は言った。それを聞いてふと疑問が浮かんだ柚子は、

「じゃあいつもは赤点でも大丈夫なの?」

と尋ねると

「まぁ一応私立のスポ薦だから勉強よりも部活で練習しろって感じだからね。」

と答えてくれた。
以前から思っていたが彼はすごく優遇されている。聞いた話では授業は昼過ぎまでで、その後は体育という名の部活動の時間になるらしい。そして夜も柚子が知っている部活よりも早く終わっている。
そんなことを思いながら柚子はテスト勉強の進み具合を聞いてみると、

「授業なんかまるっきり聞いてないし、もう正直どこがわからないかわからないほどさっぱりだね。 汗」

と優人はやれやれと頭を左右に振りため息をついた。赤点どうこうと言っていたため、それほど優秀ではないだろうとは思っていた柚子だが、その言葉を聞き思わず苦笑を浮かべた。

「それは随分と大変そうだね。汗 範囲はどれくらいなの?」

柚子がそう尋ねると優人は先ほど開いていた教科書の間から1枚のプリントを引っ張り出した。渡されたそれを見てみると、それほど難しいものではなく、高校を卒業してしばらく経つ柚子にもわかるものだった。

(これくらいなら私にも教えられるかも―――)

ふと柚子はこんなことを思い、

「テストはいつからなの?」

と尋ねてみた。

「ちょうど2週間後からかな?」

「2週間か……よかったら私が勉強みてあげようか?」

そう言い出した後で柚子は自分で言った言葉に自ら驚いた。こんな風に異性に対して自分からなにか誘うなんて以前の自分なら考えられなかった。

というより異性とこんなに積極的に会話すること事態以前はなかった。
――――すべては彼と出会ったおかげ……
そう考えると柚子はとても嬉しく、そして彼への感謝の気持ちでいっぱいになった。


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