陽だまりの詩 9-1
「…ん!」
声が聞こえる。
「…陽さん!」
近くなってきた。
「春陽さん!」
俺はゆっくりと目を開ける。
その刹那、身に起こった出来事が頭の中を駆け抜けた。
「お父さん!!」
叫んで俺は起き上がる。
見慣れた奏の病室だった。
部屋には奏一人。
今にも泣きそうな顔で俺を見ている。
どうやら俺は床に寝かされていたらしい。
奏の枕が置いてあった。
「すいません…動かせなくて、床に…」
「いや、気にしてない。ご両親は?」
「帰りました…」
「そうか」
頬に湿布が貼ってあるのに今気付いた。
「すいません!!」
奏は頭を下げる。
「…」
「お父さんが…春陽さんに酷いことを…」
奏は堪えきれずに泣きだしてしまった。
俺は奏の頭を撫でてやる。
「俺の態度が悪かったんだ」
「違います!」
「…っ」
正直、落ち込んだ。
俺じゃだめなのか。
もう奏のことを諦めてしまいそうだ…
「兄貴!なにがあったの!?」
「よお、美沙」
「…美沙ちゃん」
どうやら偶然奏に会いにきたらしい。
まったく嫌なタイミングで現れたものだ。
「ちょっと!大丈夫!?」
美沙が駆け寄ってくる。
やはり美沙は俺のことが好きなのか。
よかった。
いつも優しくしてやった甲斐があっ…
美沙は俺の横を駆け抜けて奏に飛びついた。
やっぱりそうですか。
まあわかってましたけど。
「奏!ついに兄貴に襲われたのね!ナイスビンタ!」
美沙はぐっと親指を突き立てている。
「兄貴!やっぱりあんたは野獣よ!」
状況を察してくれ、美沙。
「……とまあ冗談は置いといて、なにがあったの?」
やはり美沙は美沙だった。
妹なのに、姉のような存在。