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陽だまりの詩
【純愛 恋愛小説】

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陽だまりの詩 6-8

***

「ってかアキ、なんでこっちにいるんだ?」
「まあ、いろいろあってね」
笑うアキ。

そんな簡単に帰ってこれるのかよ…
案外、無理やり追いかけて連れて帰ってもよかったのかもしれない。

「でも…」
見合い相手はどうした?
「見合い相手はどうした?って聞きたそうな顔だね」
アキはふふん、と頬杖をついて笑っている。
「俺が見合い相手のことを知ってるってわかってたのか?」
「当たり前じゃない、私が親父っさんに頼んだんだから」
「え?」
「別れてしばらくしてもハルが私のこと引きずってたら、話してって」
「…そういうことか」
「うん、おかげでハルは私を忘れてくれた」


違う。忘れてなんかいなかった。
俺はずっとずっと…

そう、奏に出会うまで…


「俺が聞きたいのはそういうことじゃない、なぜ帰ってきた?」
俺の真面目な声にたじろくアキ。
「…お母さんはあれから落ち着いて、無事に仕事に復帰できたから」
「だから見合い相手はどうした」
なんだか悔しくなって語気が強くなる。
「…ハル」
「今夜泊めてくれない?」
「は?」
「部屋が見つからなくて、ずっとホテル暮らしだから」
「…」

帰り道、俺はアキに向かって呟く。
「家でなら…話してくれるんだな?」
「…うん」



***

パチッと部屋の電気をつける。
「うわ、全く変わってない」
アキはかつて暮らしていた部屋を懐かしみ、うろうろと歩く。
「本当にあれから一人も付き合ってないんだ」
「そうだな」
どういう定義かわからんが、部屋の雰囲気が変わっていればその後彼女ができたことになるらしい。
「さっさとシャワー浴びて寝る準備するぞ」
「うん」
アキは大きなカバンを開いて着替えを取り出すと、シャワールームへ向かった。

昔からいつも先に入るのはアキだった。

だが、すぐにひょっこり顔を出す。
「一緒に入らない?」
「うるせー」
「…ハルは冷たくなったね」
残念そうに顔をしかめる。
本気で言ったのかよ。

水音がシャワールームから聞こえ始めると、俺は適当にカップを二つ用意してコーヒーの用意を始めた。
「…懐かしすぎる」
俺の体は今までの空白の時間が無かったかのように自然に動いていた。
当時のように。

やはり一人でいるよりも二人のほうが暖かい。

「…」
パッと奏の顔が頭の中に浮かんだ。

暖かい奏。

奏はもう眠っているだろうか。


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