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陽だまりの詩
【純愛 恋愛小説】

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陽だまりの詩 5-5

***


親父は、俺が中学生のときに病気で死んだ。
血液が心臓でどうにかなったとか、それくらいのことしか今でもわからない。

美沙はまだ生まれたばかりだから、きっと親父の顔は覚えていないだろう。


親父は優しかった。
怒った顔も見たことがなかったし、休みの日にはいろいろな所に連れて行ってくれた。



親父がそんな人だったから、親父が生きていた頃の母さんの記憶は薄い。

だが、親父と一緒にいつも笑っていたのは覚えている。



そう、俺達家族が崩壊したのは、親父が死んでからだった。



母さんは仕事から帰ってくると、すぐに寝てしまうようになった。

もちろん、家事は俺がしなければいけない。

最初は家事なんか何もわからなくて苦労した。
食事くらいはどうにかなっていたけど、洗濯や掃除が中学生の俺には大変だった。
美沙の幼稚園の送り迎えは、近くに住んでいた親戚がやってくれていたけど、それ以上のことはしてくれなかった。
母さんの異変を見て、関わりを避けたんだろう。


休日になると美沙の相手をする。

そうして俺の時間は全く無くなっていった。



しばらくすると、母さんは寝る前に酒を飲むようになった。

今までより、家のことはもっと大変になった。
でも、ちゃんと毎日仕事に行ってくれる母さんには感謝していた。

そのときは親父が死んで、母さんは可哀想なのだと思っていたから。



そんな日々が数年続いたある日だった。

バイトが遅くなり、日付が変わった頃に帰り着いた俺は、勝手に玄関が開いた瞬間硬直した。


知らない男が家から出てきた。


男は気まずそうな顔をして俺の横をすれ違った。

俺はもう高校生だったから、どういう意味かは分かる。

その瞬間、絶望した。


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