陽だまりの詩 5-3
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俺と母さんはロビーに移動して会話を始める。
「なんだよ」
「あの子、彼女?随分若いけど」
「……」
なんであんたがそんな気さくに話しかけられる…
もう限界だ。
「あんた、そうやって俺に媚び売って美沙に会いたいだけだろ!もう俺達に関わるのはやめてくれ!」
周りに聞こえないように、声をセーブしつつ怒鳴る。
「……そうね、母さんはあなた達を捨てたのに今更都合がいいね」
「ああ」
俺は即答する。
「でも、この話だけは聞いて」
「……」
「美沙、体調が悪いみたい」
「は?」
毎日うるさいくらい元気だぞ?
学校に行かないと言う以外は相変わらずだ。
「!」
そうだ。
具合が悪いから行かないんだ…
美沙のやつ、なんでそう言わない…
あの時言ったじゃないか。
俺が美沙を守るから。何でも言えって。
「今年中に手術をしなければいけないかもしれない」
母さんは淡々と話を続ける。
「…」
そんなに悪いのか?
ここ何年も異常はなかったはず。
「…なんで母さんがそれを知ってるんだ?」
「それは母さんが母親だから」
「…」
瞬時にキッと睨む。
「そんな怖い顔しないで。あなた達が母親と認めていなくても、世間的には母親なのよ。お医者さんだって何かある度に電話で連絡くれた」
「…」
あの医者…
美沙に何かあったら俺に連絡してくれって頼んでいたのに…
「だから、美沙をこのまま入院させてあげて」
「だから…あんたが何を今頃…母親面してんだ」
「…不毛な争いになるね。じゃあ確かに伝えたから」
母さんは病院を出ていった。
俺はその場に立ち尽くすしかなかった。