陽だまりの詩 2-3
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「お仕事はなにをされてるんですか?」
「普通の営業マン。やりがいはあるけど、それ以上にストレス溜まるよ」
俺は車椅子を押しながら奏ちゃんの後頭部に向かって言う。
「そうなんですか」
「やっと大きな仕事を任されるようにはなってきたんだけどね」
「すごいですね!いつもお疲れ様です!」
声のトーンは明るかった。
***
「ここです」
702号室。
そこが彼女の病室だった。
美沙の部屋よりも幾分か狭いが、ちゃんとした個室だった。
「もう長いのか?」
「いえ、たまにこうやって検査入院するんですよ」
「そうか」
じゃあ、近いうちにまたいなくなるのか。
「実は、リハビリをしないかと勧められているんです」
彼女は器用に車椅子からベッドへ移った。
「…どうするんだ?」
「私、自分では歩けないと思っています」
「……」
勇気付けてあげたかった。
だけど、知り合ったばかりで何も知らない俺は、口出すことができなかった。
その後は二人で取り留めのない会話に時間を費やし、夕暮れが近付いてきたため病室を後にした。
楽しかった。
何をしゃべっても彼女は笑っていて、本当にリフレッシュできた。
さっきの暗い出来事も忘れてしまうくらい…