秋か春か夏か冬〜17話『みんなで行こう温泉旅行・後編』〜-3
「なに後ろでブツブツ言ってんのよ。カオリンとアキリンは可愛いから全く問題なし♪♪」
なにがどう問題なしなのかわからないが、自信をもって言う鈴音。
「大勢も楽しいですから、気にしないでください」
理緒もまったく気にしていない様子だ。だが亜季が鈴音の言葉に疑問を持ち、嫌な予感がするなか恐る恐る聞いてみた。
「ぁ、あの…鈴音さん。アキリンというのは?」
「もちろんあなたよ♪カオリンとアキリンは私の中の2台マスコットに決定したの♪」
背筋に寒さを感じた2人はまたしてもヒソヒソ話をする。
「……香織さん、鈴音さんってもしかして…」
「……亜季ちゃん。抱きつかれて触られるから…気を付けて…」
「またブツブツ言ってる!おしおき〜♪」
「「きゃー!」」
逃げ回る2人とそれを追い掛ける鈴音。理緒はというと…
「…やれやれ、観光どころじゃなさそうだなぁ…」
1人とりのこされ、苦笑いするのだった。
――別行動3・旅館班
恭介、杏子、奏樹の班。恭介と奏樹の2人は旅館の部屋でお茶を飲んでくつろいでいた。杏子の姿は見当たらない。
「ふぅ、やっぱり休日は体を休めるのが一番だなぁ」
このところの無理がたたったのか、急に老け込む主人公。旅館に置いてある和菓子を食べながら一服する。そして恭介は奏樹の上がり性のことを訪ねてみた。
「はい…昔からなんです。だから彼女できないんすよ…」
奏樹は切実そうに答えた。
「モテそうなのに……苦労してんだなぁ…」
姉弟だけあって香織と似ている。まだ幼さの残る顔立ちだが、男の恭介からみても奏樹はカッコいいと思える容姿であった。
「俺よか恭介先輩の方が大変そうですけどね♪好きな人とかいないんすか?」
恭介になついているのか、無邪気に聞いてくる奏樹。
「…いねーよ」
「あっ!少し考えたでしょ?気になる人とか?それとも失恋とかですか?」
奏樹は恭介の過去を知らないが故に興味本意で聞いてくる。そこへ一升瓶を片手に持った杏子が部屋に入ってきた。
「ぷはぁ♪いやぁ、ここの酒は格別にうまい♪♪ん?なにやら楽しそうな話をしてるじゃないか……よし!話してやれ恭介!」
「杏子…いきなり話に入ってきて仕切りやがって…。嫌だって言ったら?」
「外にある雪が赤く染まることになる」
笑顔で言う杏子。しかし目が笑ってない。