光の風 〈風神篇〉中編-8
「貴方、本当に風神リュナ・ウィルサ?」
少女の声にリュナは疑問符が頭の中に浮かんだ。しかしレプリカは警戒心をより強くする。それは少女にも分かった。
「そういう事。なるほどね。」
少女は微笑み、初めてマントを頭から外した。
その素顔は驚く位、あどけない顔をした少女。深い碧い瞳に長いまつげ、ボブ程のさらさらとしたを風になびかせていた。
「初めまして、風神。私はライム。」
二人はいっそう身構える。いくら少女、とはいえ大人になる数歩手前ほどのライムは雰囲気からだろうか、少し色気を感じられた。
油断ができない、そんな雰囲気さえも感じられた。
「ねぇ、雷神はどこ?」
ライムの言葉は疑問符を生み出す。
「貴方が魔物を連れ込んだの?」
リュナはライムに答える事無く、質問を投げ付けた。
「雷神を捜しているの。」
「貴方が、城門を破壊したの?」
二人の睨み合いが続いた。お互いに怒りを露にしている訳ではなく、真実への追求だった。
「貴方、じゃなくて。私の名前はライムよ、風神。」
微笑みながらライムは正す。
「リュナ・ウィルサよ。」
リュナの表情は変わる事無く、強い眼差しのままライムに向けられていた。
「貴方はそう思ってるかもしれないけどね。」
ライムは手摺りからゆっくりと浮き上がり、少し離れた場所で宙に浮いていた。その行動にリュナもレプリカも驚きを隠せなかった。
改めて見ても信じがたい、彼女は風神でもないのに風を操っている。
「本物かどうかなんて分からないじゃない。風神も、雷神も。」
その瞬間、ライムからの攻撃が再び始まった。止む事無く降り続く攻撃に、リュナの結界も渡り廊下も耐え切れなくなってくる。
リュナはレプリカをしっかり支え、自分達を風で囲み一気に隣の建物に移動した。
それを見たライムは攻撃をやめる。
リュナとライムの睨み合いが続いた。
レプリカを寝かすとリュナは立ち上がる。
「リュナ様!」
とっさのレプリカの呼び止めに振り返り、微笑みを返した後リュナは数歩前に出た。少しだけライムとの距離が縮まる。
二人は互いを視線で捕らえ、まっすぐにぶつかり合った。