双子月〜美月〜-2
「ぁあ・・・はぁん・・・私もう濡れちゃった。」
男は手を葉月のスカートの中に忍ばせる。
(・・・なんてことを!)
美月は頭が真っ白になって、そのまま動けなくなってしまった。
(止めなくちゃ・・・止めなくちゃ!)
目を閉じて必死で自分を奮い立たせようとしても動かない足。情けない自分が悔しくて涙が出てきた。
「ぁあ・・・あぁっ、気持ちイイよ、センパイっ・・・あぁん!」
甘やかな葉月の声。ギシギシと軋むフェンスの音。
(やめて!葉月!!)
ぽん。
動けず座り込んでいた美月の頭に軽く手が置かれた。
「立花美月。ちょっとそこに隠れていなさい。」
低くて優しい声が美月の名前を呼ぶ。
驚いて顔をあげると、目の前を白衣が通り過ぎていく。その人は、平然と屋上の扉を開け出て行った。
「お前ら、ここはラブホじゃねぇぞ。」
声に驚いた男は葉月から体を離した。振り返るとわりと普通の男だった。突然現われた白衣を見て、男は真っ青になっている。
「田村、お前は今年が大事な年だろ。こんなとこでオイタしてたらどうなるか分かってるだろうが。」
田村と呼ばれた男は確か3年生だ。部活動紹介のときにサッカー部の紹介をしていた。エースで人気がある。いつも女子からの声援をうけているところを見かけていた。
「あ、あの、先生、これは、その・・・」
慌てふためく田村の後ろで、とくに慌てる様子もなく制服を直す葉月。
「この子が!付き合って欲しいなら屋上でしろって言うから!」
田村は葉月を指差し、必死に訴えた。
自分だけはなんとか逃れようとした田村には、エースの魅力も微塵も感じられない。
しばらくの間の後、うんざりしたように白衣が口を開く。
「・・・田村、行け。お前はこの時間保健室で寝ていた。」
白衣は微動だにせず、それだけを言い放つ。それが合図かのように田村は走ってその場を逃げ出した。
(こっちにくる!)
美月はとっさに身を隠したが、一目散に走ってきた田村には、美月の姿など見つける余裕などなかっただろう。
田村の姿がすっかり見えなくなる頃、白衣はまた口を開いた。
「またお前か。」
また。と言うところがやけにひっかかる。
葉月は物怖じせずゆっくりと立上がると、白衣に歩み寄る。
「またセンセイ。センセイは私のストーカー?」
葉月は皮肉めいた口調で言うと、きゃはは、コワーイ、などと笑う。