桜が咲く頃〜謎〜-2
その頃、他の護衛達の間で俺のことが話題になっていた。
『熱が出たくらいで、特別に部屋なんかもらえるか?』
『普通はいつも使ってる共同部屋だよな?』
『そうだ!そんな特別扱い、されるわけがない』
『じゃあ、流行り病にでもかかったか?』
『だったらこの屋敷から追い出すだろ?
大野だって、流行り病にかかりたくないはずだ』
『ってことは、大野に気に入られたってことだよな?』
『可愛い顔してるやつは得だよな〜』
『あいつ、女みたいだもんなぁ。
ホントに男なのか?』
『確かめてみるか?』
『いいね〜。俺あいつ嫌いなんだよね。
ちょっとここで、痛い目みしとくか』
男達はニヤニヤと笑い、誰かを痛めつけたくて、誰かの血が見たくてうずうずしていた。
そうとは知らない俺は、柱に寄りかかりながら、また少し熱が上がってきていた。
『こんなところでお昼寝かい?』
俺は、はっと目を覚ます。
いつの間にか眠っていたらしい。
すぐに体を起こすが、ふらふらする。
見ると男が7人、俺を囲むように立っている。
『ふらふらしてるけど、大丈夫でちゅかぁ?』
皆、いやらしい笑いをし、目をぎらつかせている。
いつもだったら、これくらいの人数なんとかなるのだが、今日はそうもいかない。
俺の背中を嫌な汗が伝う。
『なぁ、ちょっと俺達と付き合えよ』
男達が刀を抜く。
俺も刀を抜き、庭に飛び降り、裏門を目指す。
外に出て裏道に入れば、なんとかなるかもしれない。
雨で髪や服がまとわりつく。
ふらふらして上手く走れない。
後少しというところで男達に行く手を塞がれる。
完全に囲まれた。
不安がよぎる…
っと同じにアイツの顔が浮かんだ。
何故こんな時にアイツの顔が…?
そちらに気をとられていたため、男達の攻撃に対して反応が遅れた。
まずい!!
そう思った時、人の悲鳴が聞こえた。
男達は皆一斉に声のした方へかけて行く。
屋敷が襲撃されたのかもしれない。
だとすれば、ここで手柄を立てれば金一封が貰える。
皆、あっという間に姿が見えなくなった。
助かった…
ほっとしていると、いきなり腕を捕まれた。
ぎょっとして振り向くと、アイツがいた。
『こっち!』
そう言うと、アイツは俺の腕を掴んだまま走り出し、屋敷を飛び出した。
何が何だかわからない。
ただわかるのは、アイツが目の前にいるということ。
俺は何故だか安心し、気を失った…