幼馴染みの定義-8
「なあ、違うなら違うって」
「うるさいよ」
「ごめん」
「アイくんがあまりにもうるさいからお腹痛くなってきた」
「ごめん」
それはおれのせいではないんじゃないかと思ったが、今の状況では謝罪の一点張りを通すしかなかった。
今のおれ達は周りからどう見えているのだろうか。
個人的には" 嫁の尻に敷かれる旦那 "の絵が出来てそうだが、こんなことをハナに言ったら全力で否定されて叩かれるに百円BET。 千円でもいい。
「お腹痛いし、このアイスあげる」
目の前で突き出された。
「だけど、」
どう返せばいいんだ。 それだけを聞きたかった。
素直に受け取ればいいのか、「お前のものだから」と否定すればいいのか。
それとも「間接はイヤだろ?」と言ってやればいいのか。
「アイくんは嫌いだけど、別に間接キスなんて気にしないから」
また読まれてる。
受け取ることにした。
同時に、ハナが突然走り出した。
「おい!?」
行く先は公園らしい。
ハナがベンチに座り、おれも釣られて座る。
ちらりとハナを一瞥すると、ハナもまた、こちらを見ていた。
そのまま勢いで顔を近づけることもなく、キャッチボールをしていた親子に目が行くだけで終わった。
そのまま何分か経ち、おれの金で買ったアイスを思い出す。
ハナはこのアイスをすぐに食べたかったから、ここに来たのか? ならば渡すべきだろう。 しかしおれから切り出して如何なものか。
自ら重い空気の中に突っ込んでいくのもどうかと思うし、この上ないほど気まずい、というのが実の本音である。
「さっきの話のつづき、してもいい?」
先に口を開いたのはおれじゃなく、ハナだった。
「さっきの?」
「裸の両親のを見て、って話」
「あ、ああ」
とは、一応相槌を打ったものの、その話に続きがあったのか? という疑問が湧いたが、話を聞く体勢に入った。