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ジャム・ジャム・ジャム
【SF その他小説】

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ジャム・ジャム・ジャム-12

「嫁にする奴の気がしれないな」
そんなことを言ってミネラルウォーターのボトルを置くと、エイジはやおら立ち上がって大きく伸びをした。
「さて、行くか」
ひとりごちて、船室を出て行くエイジ。
そんなエイジの後姿をちらりと見やり、ジャムはぼそりと吐き捨てた。
「……大きなお世話よ」

(しっかし)
ダナのいるであろうコックピットへ向かう途中、エイジはぼんやりと空を見つめて呟いていた。
「あいつ、意外と胸でかかったなー」
ジャムを背負った時に背中に感じたふくらみを思い出し、エイジの顔が再び赤らむ。
そんな彼の様子を訝しげに見やり、ダナは眉根を寄せた。
「何、その気持ち悪い顔。鼻の下伸ばしてないで、早く出発準備しなさいな」
不意に現れたダナとその言葉に、エイジはぎくりと身体を強張らせた。
「の、伸ばしてなんかねえよ」
そう言や、と彼は誤魔化すように言う。
「結局、トレジャー手に入らなかったな」
「でも、ウエイトレスの彼女の言うことは嘘じゃなかったじゃない」
「手に入らなかったのも事実だろ? 近いうちジョナに行って、彼女に責任とってもらわねーとな」
今度こそデートかキスか頂くからな、とにやついた顔でエイジが言うのを傍らで聞きながら、ダナは苦笑いを浮かべてコックピットへ入って行った。


「そう言えば、エイジ」
「ん?」
小さくなって行く惑星マヌゥ・シーチを見つめていたエイジに、ダナが声をかけた。
神妙そうな面持ちで、彼は言う。
「ジャムのことなンだけど」
どきり、とエイジの胸が鳴った。
「彼女、どこかで見たことない?」
「いや――」
エイジは首を横に振って答えた。
「あんな生意気な女、会ったことねえよ」
「生意気で悪かったわね」
エイジの背後から、そんな声。
再びぎくりと身体を強張らせたエイジが後ろを振り向くと、ジャムが腕を組んで立っていた。
「な……何だよ」
「何か」
きっとジャムはエイジとダナを交互に睨み付け――
「何か食べるもの……ちょう、だい……」
たじろぐ二人にそれだけ言うと、くたりとその場に倒れ込んでしまった。
「たッ、大変! エイジ、冷蔵庫の中から適当に持ってきて!」
「お、おう」
慌てた二人は、プラチナ参号の中にあるありったけの食料をコックピットに集める。
船内を駆け回ったせいで息を荒げるエイジの傍ら、ダナは食料の山――山といえるほど多くはないのだが――から適当に選ぶと、簡易キッチンへと入って行った。
やれやれと息をついて、エイジは先程開けたミネラルウォーターのボトルに口をつける。
「一日半、何も食ってなかったんだっけか……」
気を失ったジャムの方をちらりと見やり、エイジは小さく溜息をついた。

十分くらいして、香ばしい良いにおいがエイジの鼻腔を突いた。
ダナがキッチンからスープ皿の乗ったプレートを持ってやって来る。
「お、良いにおいじゃねえか」
スープ皿にはコンソメスープに浸されたトーストと半熟卵が溶けていて、香りも見た目も食欲をそそった。
「それじゃ、味見」
エイジがダナの許可を得ずに、スプーンでスープをひとすくいする。
あッとダナが声を上げるのと同時に、エイジはそれを口に運び――かちゃん、とスプーンを落とした。
「ば、馬鹿かお前は! 砂糖入れすぎだ、砂糖!」
「疲れてる時には甘いものがいいのよ!」
妙な甘さのコンソメスープに抗議の声を上げるエイジ。
しかしダナは、この甘さが良いのだと言い張って聞かない。
エイジが制止するのも構わず、ダナはジャムを優しく起こすと、温かなスープを差し出した。


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