ジャム・ジャム・ジャム-10
ギャラクティカのトレジャーハンターや海賊の間では、撃ち易く弾の装填も楽なレイガンが主流だ。
実弾銃などを得物にしている者など滅多にいない。
そんな今時珍しい実弾銃をエイジが持っていることはダナも知っていたが、彼は普段ハントに出かける時には専らレイガンを用いていた。
「レイガンも、例のクラッシュの時ぶっ壊れたんだよ。最近はずっとこいつ持ってるの、知らなかったのか?」
トレジャーハントをしに行く機会も、エイジが銃を抜く機会も最近はなかったから――ダナは納得すると同時に肩を竦める。
改めてエイジは引き金に手をかけた。
「気を付けろよ、結構衝撃来るぜ」
言って、ぐっと引き金に力を入れる。
「……?」
しかし、なかなかやって来ない衝撃。
硬く目を瞑っていた少女は、おそるおそる目を開けた。
エイジは顔を顰めて、軽く舌打ちをする。
「ジャムった」
「流石『オートジャム』ね。使えないわァ」
「『オートマグ』だ、馬鹿にすんな」
愛銃を馬鹿にされ――もっともダナ自身は馬鹿にしているわけではないのかもしれないが――、エイジはダナを睨んだ。
普段使わないと言っても、愛用の銃のクリーニングなど欠かしたりはしない。
今回はグリップの握りが甘かったようで、排莢不良を起こしたようだった。
エイジは右手を閉じたり開いたりしながら、首を傾げる。
「暫くこいつを握ってなかったから、力弱くなってんのかな」
「……ダサ」
先のお返しだろうか。少女がぼそりと呟いた。
しかしエイジはその言葉を聞き逃さなかったようで、冷めた目をした少女に詰め寄る。
「んだと!?」
「喧嘩しないのッ!」
仲裁に入ったダナは、やれやれといった様子で少女の右手を掴んだ。
何をするのだろうか、と怪訝そうな顔を浮かべていた少女の瞳が、次にダナの起こしたアクションに点になる。
「ふンッ」
小さな掛け声一つ。
ダナは手と鉄枷の隙間に指を挿し込み、左右に引っ張っるように力を入れた。
何という力だろうか。鉄枷が真っ二つになって床に落ちる。
「ふンッ、ふンッ、ふンッ!」
そして全ての枷を取ってしまうと、彼は得意げに笑って見せた。
「ほら、取れた」
「あ……ありがとう」
嬉しいは嬉しいが、人間離れしたその怪力に、少女の笑顔が引き攣った。
エイジはと言えば、眉根を寄せて呟きを漏らしたのだった。
「最初からやれよ……」
――ようやっと手足の自由を得た少女は手首をほぐしながら、エイジとダナに視線を向けた。
「助けてくれてありがとう、感謝するわ」
そう言って笑顔を見せた少女。
にっこりと笑った顔を見て、エイジの顔が思わず赤くなる。
(くそ、あんな性格悪い女だってのに……)
「感謝なンてそンな……三万Gも貰えれば結構よォ」
ちゃっかりとそう言って、ダナも笑みを浮かべた。
少女はその言葉に苦笑し、そしてちらりとエイジを見やった。
「あ、あんたも」
エイジがどきりとして少女を見ると、彼女は俯いて微かに頬を赤らめながら言った。
「ありがと……」
尻すぼみな感謝の言葉だが、その気持ちは十分彼に伝わった。
何だか照れ臭くて、エイジは視線を逸らして頷く。