飃の啼く…第22章-18
「っあ…ぅ…」
私の一番深いところに、貴方は届いているんだよ。言葉では表せないほど…たくさんの意味で。
「つむ じ…。」
顔にかかる飃の髪を、かきあげて、その目を見る。とても濃い夜明け…そんな色をした貴方の目。その目が閉じて、口付けが降りてくる。貴方の高まりを、私に渡して…今度は私が、貴方に渡すから。
「は…ぁ…あぁ!」
瞼を震わせて、あの感覚が私の中で生まれる。渦の連鎖が起こるようにそれが体中を巻き込んで…
「飃…一緒 に…!」
握る手に力が入らない。飃がその手を押し開けて、指をからませる。
「……っ!」
切迫した息の後に、吐き出される長い息。
心臓がゆっくりと、あばら骨を打ちつける。力の抜けた体は、信じられないくらい熱かった。
愛を交わした後の、心地よい倦怠感。身体を動かすのも億劫になる。それでも、寝返りを打って飃の身体にぴったりとくっついた。私の髪を、飃がかきあげて、額にキスをした。そのまま、眠る前に着くような心地いいため息をついて、飃の頭が枕に沈んだ。長くて綺麗な飃の髪が、私の吐息に合わせて揺れる。
そして…私は幸せだ。
私は、今。
その気持ちを感じたのか、飃の手が背中に伸びて、私たちの間にあったわずかな隙間を埋めた。そして、差し込む日差しに背を向けて、私たちはしばらくそうして抱き合っていた。
最初の蝉が歌いだして、私たちの住む街に、夏がやってきた。
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