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飃(つむじ)の啼く……
【ファンタジー 官能小説】

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飃の啼く…第22章-19

さくらちゃん



こうしてペンを持つと、貴方に伝えたいと思っていた何もかもが頭の中から逃げていくようです。でも、最初にこれだけは忘れずに…貴方をとても、愛していました。これからもずっと。私の身体が朽ちた後も、この思いは滅びることはないでしょう。貴方が、私の愛を知っていてくれるのですから。

貴方を身ごもった時、世界はなんと美しく見えたことでしょう…あなたが生まれる世界には、争いなどあってほしくは無かったけれど、残念ながら、この世にはいつだって戦いがあります。それは貴方もわかっていること。私は、授かった素晴らしい命に、その戦いから逃げて欲しくはなかった。私が命をかけたものは、争いの結果でも、立派な武器でもなく…その戦いを生き抜くことができる、あなたと言う生命への希望です。だからさくら、希望をいつも胸に持ってね。貴方は今までも、そしてこれからも、大切なものを沢山失って行くでしょう。でも、過去を前に進む理由にしてはいけません。後ろを向いたまま、正しい方向へ歩いてゆくことはできないのだから。

ああ…本当はこのまま、あなたが大きくなるのをずっと見ていたい。貴方の産声は、とても元気で愛らしかったのよ…看護婦さんも驚いてしまうくらい。そして、最初に話した言葉は“まま”でした。お父さんのほうへ行こうとしたのが最初の一歩。それから、最初に描いてくれた絵は母さんとお父さんと貴方の絵でした。今でも大事にとっておいてあるからね。

書きたい事は尽きません。貴方はどんな女性になっているのでしょうね。きっと私に似て泣き虫で、お父さんに似て頑固なのでしょう。笑顔が素敵なのはわかっています。小さな時からそうだったのだもの。

最後に、さくら、もう一度、愛しています。貴方を授けてくれた全てのものに感謝しています。



母。


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