イヴの奇跡U-3
2月14日。
バレンタインデー。
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『圭?お仕事は?』
と聞きながら、イヴはトーストを斜めに切り、中にスクランブルエッグとハムとレタスをテキパキと詰めてお皿に盛り付ける。横にパリパリと焼けたウィンナーとミニトマトを二つ飾ってテーブルに置く。
そして、自分にはミルクを温めたもの。神崎には無糖の珈琲。
『今日は休む…』
毎年憂鬱な今日この日。
決まって神崎は休暇を取る。
が、明日には溜まりに溜まったプレゼントが届くので今日休んでも変わりがないのだが…
神崎のささやかな現実逃避だ。
『俺の数少ない休みはまさに今日使われるためにあるんだ…』
なんて言いながらもはむっ、と口にトーストを運び込み気付く。
『イヴ?!お前料理なんかいつの間に覚えたんだ…?』
『え?いんたーねっととか…本とか!あと、いつもお勉強教えてくれる魅音里ちゃんにも料理教えて貰ったんだっ』
と言って、もぐもぐと自分で作った料理を口に運ぶイヴ。
ちなみに魅音里(みおね)とはイヴに勉強(違うことも教えている様子だが…)を教えている家庭教師だ。
イヴが人になり、神崎が知識を与え出して二ヶ月ぐらいだろう…。イヴは驚くスピードで言葉や意味を覚えていった。勿論、まだ知らないことの方が多いが…。
『そのうち、俺の秘書にでもするかな…』
『ひしょ…て何〜?』
神崎のひそかな企みを聞き逃さないが、言葉の意味を理解出来ないイヴ。
『なんでもないね♪』
意地悪く答える神崎にイヴはちょっと膨れてミルクを啜った。
食事を済ませて神崎は会社に休暇を取ると一言連絡を告げた。
決まって2月14日に休むので咎められず、止められず…。
そして、携帯の通話ボタンを切って机に置いた。
『どこか行きたい場所でもあるか…?』
食器を洗うイヴに尋ねる。
ふと見ると、イヴはまだピンクのキャミソールに下着姿…。
せっせと食器を洗うのに夢中になっているため神崎の声は届いていない様子だ。
社長とはいえ…
神崎も一人前の男である。
起きてから暫く時間は経過したものの、今更になってむくむくと沸き上がる性欲。