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冷たい情愛
【女性向け 官能小説】

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冷たい情愛10-9

「なら…私が彼女になろうかな…」

お酒の勢いを借りられる今しかない…
言ってしまった私。

私はこういう風にしか、想いを伝えられないのが情けなくもある。
先生に想いを伝えた時もそうだった。


先生となら…結婚してもいいかな…


なんて間抜けな告白だったのだろう。
そしてまた、同じような伝え方しか出来ない…30になった私。

相手が答えを選び、それを伝えてくれるのを待っているだけ。
決して自動詞的には動けない。

私は恐る恐る彼の顔を見た。

彼は、驚いた様子も無く私を見つめ返していた。

ブルブル…

私の携帯が着信を告げる。
なんて間の悪い…

「電話ですよ、出たほうがいい」

彼は、告白の真っ最中だという事に気付いていないかのように静かに言った。
私はなんとも気まずい気持ちのまま、電話に出た。

『今日はありがとうね。久しぶりだからもっと話したかったんだけど』

笠原智子からの電話だった。

「私も久しぶりに山本先生と話せたんだ。楽しかったよ」

『なんか悪かったなって。まさか人と一緒に来ると思わなかったからさあ、挨拶もしなくて悪かったかな』

「大丈夫、裏の土手が気に入って、歩いてくるって言ってくれたんだから」

私も、こんな状況でなければ智子ともっと話したかったが…
目の前には遠藤さんがいるのだから…失礼だし、早く切りたかった。

そんな状況を彼女は知る訳もなく、いつもの勢いで話し続ける。

『まさか…彼氏?』
「違うよ…取引先の人…」
『ええ?仕事の人?でも一緒に来るなんて怪しいなあ』

久しぶりの私の浮いた話が楽しいと言わんばかりに、彼女は楽しそうな声になる。

『ちょっと!まさか今も取り込み中?』
「そんな訳…帰りにゲーセンに寄って帰ってきただけ」
『ゲーセン?珍しいじゃない…あんだけ嫌々だったのにねえ昔は』

どういう事だろう…。
昔は…と確かに彼女は言った。

『覚えてる?紘ちゃんがさ、すっごい機嫌悪い事があって…私が部活終わるまで待っててさ』

いつの話だろう…?

『陸上部でゲーセンに行くって言ったら、私も行くって…くっついて来た事あったじゃないの』

一度も行ったことがないと記憶していたのに…
彼女が今話している過去の出来事を、私は全く覚えていない。


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