秋と春か夏か冬 12話〜『サヨウナラ』〜-4
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――男の子がいた
夢と翼を両方とも失ってしまった…悲しい男の子。
暗闇の中、女の子と出会った。
――女の子がいた
男の子に、大きな翼を与えた女の子。
それは優しい男の子だと知っていたから。
女の子も夢を持っていた。
――男の子と女の子は恋に堕ちた
お互い惹かれ合った。
まるで惹かれることが必然であるかのように。
女の子も男の子も…相手のことが、とてもとても大事だった。
――男の子は知っていた
夢を失うことの辛さを誰よりも。
そして女の子が夢を諦めようとしていたことを。
女の子が、夢より僕を選ぼうとしていたことを。
――女の子は知っていた
男の子が私を送り出そうとしていたことを。
そして、それが男の子の優しさなんだと。
そんな男の子だから…惹かれたことを。
――2人は知っていた
この楽しい時間が終わったら、男の子が女の子を送り出すことを。
そして2人の路が重なることは…もうないことを。
――2人は誓った
別れではなく始まり、終わりではなく旅立ちであることを。
悲しいけど後ろを振り返らないことを。
そして今より…幸せであることを。
――女の子は翼を与え――男の子は夢を与える――君は僕を救い――僕は君を送る――
路は交差することは…ないけれど…。
いつかまた、笑いあえる日まで暫しのお別れ。
――さようなら――――――――――愛する人―――
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…なんだこの絵本…。
まるで……
俺と美雪みたいじゃないか……。
恭介は再び、美雪の手紙の続きを読む。