reality ability‐第6話‐集められた“過去(しんじつ)”‐-12
「‥‥‥」
凰輝は無言で見ていた。織音は振り返り、凰輝に激しい声で怒鳴った。
「凰輝!これは何!?解きなさい!」
凰輝は動揺せずに真剣な表情で喋る。
「それは無理です。これは“禁断詠唱”の二つを使いました。」
織音は凰輝に近づき、顔を叩こうとした。凰輝は目を閉じた。
「‥‥やめろ。叩いても意味がない‥‥」
その声で織音は行動を止めた。二人は声の主を見る。統神 皇希だった。
「‥‥また、貴方なの?私たちに何の用?」
織音は怒っていた。表情や雰囲気で容易く解った。凰輝は悲しそうに未来の皇希を見た。
「‥‥オレは用はない。零歌が織音に言うことがあるそうだ‥‥」
そう言うと、未来の皇希は一瞬にして零歌になった。織音は睨むように見ているが、凰輝は当たり前のような表情だった。
「‥“禁断詠唱”の一種かしら?」
すると、零歌が答えた。
「そうよぉ。貴女が使っていた紛(まが)い物とは違うわぁ。司義莉さんは覚えてないようだけど。‥‥“心身詠唱”。」
零歌は“心身詠唱”と言った。また、織音が使った紛い物とは違うとも。
「私のはオリジナルよ。ただ思い付いただけ。で、何か?用は何?」
織音は落ち込む様子もなく、淡々と言った。
「ここじゃあ、言いにくいから付いてきてくれるぅ?」
零歌は何処かへと歩き出す。
「‥‥‥」
織音は皇希の部屋の扉を見た。そして、零歌の後を追うように歩く。
「‥‥‥」
凰輝は何を思っているのか、表情からは無理だった。凰輝も何処かへと歩き出す。
‐一方、皇希自室内‐
皇希は一連のやり取りを聞いていたようで、考え事をしていた。何を思っているのかは不明だが。
「‥‥‥」
皇希は“記憶の欠片”を見ている。それは円形の魔法陣の上下左右の円枠に規則的に置かれていた。この形が正しいだろう。
まず、上の円枠には首飾り、左側の円枠に腕輪、右側の円枠は指輪、最後に下側の円枠内に耳飾りが置かれていた。