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飃(つむじ)の啼く……
【ファンタジー 官能小説】

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飃の啼く…第21章(後編)-8

「…あんたはさくらを何だと思ってる?狗族?それとも人間?」

茜の質問に、飃は笑った。

「最初は、手のつけられない小娘だと思っていた。人間のようにか弱く、狗族のように頑固で誇り高い…どう扱ったらいいのか、己もよく迷ったが…どちらかに分類しようなど、無駄なことだ。今となっては、己はあいつが誰だろうと、俺の妻で居てくれさえすればいいと思えるようになった。」

「呆れた。お惚気はあんたの奥さんから聞いてる分で十分よ。」

そう言って、本当に呆れた振りをして笑った。

「…あんたがいい人で安心したわ。」

「それは、お褒めに預かって光栄だ。」

飃に冗談を言う口があったのを驚くような顔をして、茜は飃を見上げた。彼は、さくらが澱みを退治しに出かけた闇の中を見透かすように眺めている。気付かれないようにその横顔を観察しながら、何故、さくらがあんなに沢山の戦いを切り抜けてくることが出来たのか、理解できたようなきがした。さくらは確かに強い。心も身体も。だけど、その強さを補い、育てていったものは、多分この男の持つ何かなのだろう。

茜は少し、ほんの少しだけ、さくらを羨ましく思った。



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澱みはとっくに倒したけど、もうしばらく七星を振るってみたくて、闇の中で飃に教わった型を練習する。意外なことに、九重よりも七星のほうがかなり重い。こうして素振りをしてこの重さに慣れないと、すぐに腕が疲弊してしまうだろう。とはいえ、この重さは一振りにスピードと重みを与えてくれる。剣の流れを絶たずに、遠心力をうまく使うのがコツだということが、最近ちょっとつかめてきた。

「っ!!」

突然、目の前に突き出されたものに私の身体がとっさに反応する。薙刀よりよっぽど小回りのきく剣でその棒状のものを払い、その奥にいた何者かの喉もとに切っ先を突きつけた。暗闇に慣れた私の目が、そこまで近づいてようやく誰だったのか気づかせた。

「飃!?」

にやりと笑った口に、犬歯が覗く。

「流石は我妻。覚えが早いな、ん?」

脅かさないでよ!そう言って、お腹に本気でこぶしを突き出した。丈夫な飃はびくともしないけど。

「気配を消していたからな。それでもお前はかわしたのだから、大したものだ。」

自慢げに言う飃に、なんとなく怒る気力をそがれてしまう。


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