年上の事情。‐9-3
「立花くん、ちょっといいかな」
「ごめんなさい」
あたしは深く頭を下げた。休憩室の床が目に写る。
やっぱりあたしは立花くんの気持ちに応えることは出来ない。
「どうしてですか?」
えっ?
顔を上げると彼はあたしを真っすぐ見ていた。
どうして‥?
いつもより強い視線だった。目が離せないくらい、強く、恐いくらいに。
体が固まってしまう。
「俺、頭悪いから‥、
ハッキリ言ってもらわないと‥分からないです」
今度は悲しい目をしてる。
あたしは‥、
彼の気持ちに応えることは出来ない。
それはどうしてかって‥?
彼の気持ちには気付いていた。
その時から、あたしの気持ちは決まっていた‥?
違う。
ただ、
彼の目に映るあたしは‥
「俺と‥」
え?
「俺といるときは、いつも五十嵐さんは困った顔をしてました。
俺がいつも困らせてましたね‥
わかりました」
そう言って、立花くんは出ていった。
悲しい目をしたままだった。
「へぇー‥」
一人残された休憩室に聞き慣れた声が響いた。
‥!?
振り向くと、反対側の入り口にニヤついた顔の石原部長が立っていた。