少女と少年の市民プール-3
――…まったく人がせっかくビキニ着てさりげなく、谷間アピールを……
『ベチャパイ』。
夕の言葉を反射的に思い出す。自分の胸を見る。例えるなら地平線だろう。わずかに膨らみがあるのが、なんとか、ギリギリ分かるぐらいだった。
――い、いえ、美脚アピールをしたというのに……
亜子は女友達に、『美脚だよねぇ、遺伝子良いんだろうなぁ』と言われたこともある。
――なのに…夕って全然見てこなかったしー………まさか!?…飽きられた!?
その可能性はあった。いつも一緒だったのだから。
だが、それだとこの先絶望的ではないか。
――いや、まだよ。夕はきっと巨乳好きなのよ…そうおっぱいフェチよ…
だが、それでも絶望的だ。しかし、飽きられたよりはマシではないだろうか。
亜子が気がつくと周りは夕焼けが闇に染まり始めていた。
――またやってしまった
少女はベンチから立つと、プールの受付へと歩く。
――はぁ、そうよ、思ってるだけじゃ駄目…大丈夫…今まで夕に彼女は居なかったんだ…私がすべきことは…
亜子は真っ直ぐに前を見据える。それは何かを決意した顔だった。
――牛乳を飲んで胸のマッサージして、夕が彼女を作るまでにカップ数を増やすこどだわっ!
亜子が告白する日はまだまだ先になるみたいだった。