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社外情事?〜気晴らしの酒と思わぬ睦事〜
【その他 官能小説】

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社外情事?4〜順調で幸せな一日と難問の前兆?〜-6

「…で、いつぐらいに向かうの?」

それに対し誠司は、一拍置いて頬を指先で掻く。
「えぇと……玲さんがコーヒーを飲み終わったら、ですかね」
「…ふぅん…」
頷く玲。彼女の口に、コーヒーのカップが運ばれる。
そして一口。香りと湯気の立つ、まだ熱いそれを飲み、カップを置く。
その後、彼女は頬杖をつき、軽いため息をついた。
「……早く行きたいわ…」
対する誠司も、軽くため息。
「だからって慌てて、舌を火傷したりしないでくださいよ?」
すると玲が、「言ったな?」と言いたげな視線を向けた。
「わかってるわよ。第一、知ってるでしょ?私が『コーヒーはゆっくりと味わう』人だって」
そして再びコーヒーを一口。その後、手に取ったカップを少し持ち上げる。
「…わかってますよ」
一方の誠司は、やれやれとばかりに肩をすくめた。

――内心、うずうずしながら。


――それからおよそ一時間。
コーヒーを飲み終わった二人は駅へと向かい、電車に乗り、玲の住むマンションの前にいた。

「……やっぱり、すごいですね…」

立ち止まった誠司の口から、感嘆にも似たため息が漏れる。その様子を見た玲は、鞄を背負い直しながら苦笑。指紋照合用の機械に指を押し当てようとして、彼を振り返る。
「すごいって、何が?」
「…玲さんがここに住んでる事、ですかね」
微かに皮肉の混じった問いかけに、誠司は普通に答える。
「立地条件、設備、デザイン、全てが高いって評判ですから……」
だが、その後はため息の言葉。
「…俺なんかじゃ、夢のまた夢なんだろうなぁ、って」
――どうやら、自分の住まう所と比べているらしい。なんとなく察した玲は、しかし何も言わず、マンションのオートロックを解除する。そして扉を開けると、「誠司君」と彼を促した。
促された誠司が、先に入る。その後に玲が入り、扉を閉める。
その間、しばし無言。
そして、エレベーターに乗り、ボタンを押して扉が閉まった所で、玲は口を開いた。

「…夢のまた夢、は間違ってるわよ?」

――振り返り、微笑を携えて。
「…?」
その言葉と微笑の意味がわからず、誠司は無言で首を傾げた。すると玲が、微笑のまま――

「だって、私と結婚すればいいもの」

――空白。

たっぷりと間を置いて、誠司が勢いよく後ずさり。背中が壁にぶつかる。同時に、目的の階――五階についたらしく、エレベーターの扉が開く。
「ふふ…そんなに驚かなくてもいいじゃない」
肩をすくめ、苦笑する玲。彼女は口元に笑みを残し、扉が閉じないように「開」のボタンを左手で押さえながら、右手で誠司の腕を掴み、引っ張る。
「…いきなり『結婚』だなんて言われたら驚きますって…」
引っ張られるままにエレベーターから出ながら、誠司は呆れ気味の視線を向けた。
「…それにその言い方……俺が玲さんの持ってるもの『だけ』に目を向けてるような気がして、正直嫌です」
視線に気付く玲。同時に、言葉にこめられた誠司の意思を悟る。
彼女は黙したまま、くるりと誠司に背を向け、あっという間に自身の住まう部屋――503号室の前に立った。当然、誠司も慌ててそれに続き、玲の横に並ぶ。すると玲は、鞄の中から取り出した鍵を扉の鍵穴に差し込みながら、嬉しそうに笑った。


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