jam! 第6話 『穴だらけの街』-3
▼▼
はるか昔の事だ。
この霧生市にまだ名前なんか付いてなかったような、そんな時代。
……この場所は『魔界』と繋がっていた、と言われているんだ。
『魔界』ってのは……まぁつまりこの世界とは異なる世界の事なんだが、どうもあっちの世界の住人は人間よりはるかに強かったらしくてな。
こっちの世界の人間は自分達とは実力も姿形もまるで違うあっちの世界の住人を『魔物』とか『魔族』と呼び始めたんだ。
ちなみに姿が人間に近い種族を『魔族』、それ以外の種族を『魔物』って区別してたらしい。
……ま、これも人間のエゴってやつだな。
でも実際、この霧生市に限らず別世界の入口と繋がっている場所ってのは世界中にいくつもあるんだ。
ほら、聞いたことあるだろ?『森の中で妖精を見た』とか、『満月の夜に変身する狼男』とかさ。
あれもだいたいはその繋がっていた入口からこの世界にやってきた異世界の生物だと言われている。
そうそう。そんな風に異界と繋がっている場所の事を、通称『穴』と言うんだ
……話を戻すぞ。
んで、そういう場所と同じくこの霧生市も魔界と繋がっていたワケだ。
つっても、ただ魔界と繋がってるってだけの場所ならこの日本にだって結構あった。
……しかしだ。
この霧生市にはその繋がっていた場所が五ヶ所も存在していたんだよ。
しかも五ヶ所全てが日本にある中でも最大級の大きさのな。
当然、ここは様々な異界の生物が跋扈する、文字通りの『魔界』と化したワケだ。
……さて。そんな場所にだな、あるとき五人の旅人がやって来たんだ。
その五人は日本中を旅して魔界と繋がってる場所を封印して廻ってたんだが、この場所へ来てそりゃ驚いたらしい。
まぁ、今まで見た中でも恐らく最大級の穴が五ヶ所もあればそりゃ驚くよな。
というワケで、その五人は襲ってくる魔物をぶっ飛ばしたり説得したりしながら、穴を封印していったんだ。
▼▼
「……ここまではいいか?」
「なんか簡単には信じられませんけど、まぁだいたいは」
「…ほぅ?自分で言うのもなんだが、普通こんな話されたって信じないだろ?」
二階堂さんはコーヒーを飲みながら意外そうな顔をした。
「まぁ、実際にこの前の念魔とかを見てなかったら信じなかったかもしれませんけどね」
「まぁそうかもな」
「それに、二階堂さんにそんな長い作り話が即席で作れるとも思えませんし」
「どういう意味だコラ。……おーいやもりん。まだかー?」
まだ地図に向き合って何やら光を操作している守屋さんに呼び掛ける。