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飃(つむじ)の啼く……
【ファンタジー 官能小説】

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Dawn-3

「生きてん…のか…?」



その物体は目にも留まらない速さで身を起こして、ひしゃげたバンパーにダン!と立ち上がった。ただおろおろするばかりの大和を見下ろしていたのは…

「お、女!?」

嘘みたいに綺麗な鉄(くろがね)の髪、目には変な包帯を巻いて、しかも目の模様が書いてある。片腕も無い…思い出したのは、映画か何かでベトナム帰還兵に扮した乞食、いや、乞食に扮したベトナム帰還兵だったか?いやいや、どっちでもなかったんだ、あの映画の主人公は詐欺師だったんだから…などと、めまぐるしく回転、もとい混乱する大和の脳に、指令が下る。

「人間!こいつを動かせ!!」

しゃべった。この女しゃべったよ。いや、当たり前か。いや、当たり前じゃねえ!なんでこんな衝撃をまともに食らってそもそも立ってられるんだ?

「ばっ、馬鹿言うな!今の衝撃でエンジンがいかれちまったよ!!」

女は舌打ちして、クラクションの怒号が渦巻く大通りを見回した。凛とした表情は、ゾクゾクするほど…

「あれは?あの乗り物は速そうだ。」

指差したのは、二人乗り用のバイク。乗っているカップルがこちらを興味深そうに眺めていた。

「え?まぁ、あれなら…」

「よし!あれを借りろ!」

「はぁ!?人のだよ!持ち主がいるだろうが!」

女はいらだたしそうに大和をにらみつけた。

「借りる、といったんだ、間抜けめ!」

何か言い返そうと口を開いた大和をさらに遮って

「いででで…なにすんだよ!!」

「後ろを向け、そうだ、もっと上…あのビルの向こう側に跳んでいるの、見えるか?」

髪の毛を掴まれて、むりやりその方向に向かされる。女は何か口ずさみ(歌か?) 大和の目を一瞬手で塞いでから、その手をどけた。

「っざけんな……ぁ?」

「そう、あれだ。」

大和がみたのは、赤い目を航空障害灯のように不気味に光らせながら真っ暗な空を旋回する化け物の姿。エイさながらのフォルムで、都会の上空を我が物顔で泳いでいる。

「なんだよ…あれ…!!」

「私を探しているのだ。ここは人が多すぎて戦えない。だからあの乗り物を動かせ!」

女の腕にしては頑丈だが、折ろうと思えば簡単に折れてしまいそうな腕をチラッと見る。しかも、片方しかないのだ。


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