私の涙、いくらですか?2-4
「それにかなり有名な私立大学ね。どうしてこのバイトを始めようと思ったのかしら?」
「私、大学の特待生なんです。授業料等は免除されてるんですが、両親からの仕送りを貰っていないので、自力で生活費を稼がなくてはいけなくて、それでアルバイトを。」
大学生ということと、偽名以外は全て真実を書いた。
親の援助を受けていないという点に、山崎さんがえらく感心している。
この人も子供がいるのかもしれないわね。
「学校の後で働くとなると、かなり大変だけど大丈夫かしら?」
「えぇ、体力には自信があるんですよ。」
「そう、頑張りましょうね。」
やった!
私はにっこりと笑う。
働く時間帯や、仕事の日程などを具体的に決め、アルバイトの契約をした。
どうやら、面接をクリアしたようだ。
私はほっと一息をついた。
その時。
事務所のドアがいきなり開いて、女の子が顔を覗かせた。
「山崎〜?ちょっと、私のチェックのワンピースどこ行ったか知…」
その女の子と目が合う。
見知った顔に私は驚愕した。
(佐伯樹里亜っ…!)
クラスは違うが同じ高校の同級生。
大金持ちっていう話は皐月から聞いていたが、ここが彼女の家だったなんて!!
まずい。これは、バレる…っ!
私は汗ばんだ拳を握り締めた。
「あぁ、新しい子?雇ったの?」
「えぇ。田村さんこちらが樹里亜お嬢さんですよ。挨拶なさい。」
(…え?バレなかった…?)
考えるより先に私は頭を下げる。
「よろしくお願いします…。新しく入りました田村亜矢子です。」
「よろしく。じゃあ山崎、ワンピース早めに捜しておいてよね!」
佐伯樹里亜は言いたいことを言ってさっさと出て行ってしまった。