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【悲恋 恋愛小説】

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絆 -終わりと始まりと--1

 あの日、巴は香澄に何があったかは聞こうとしなかった。
 ただ黙ったまま残念そうな顔をしていた。私は毎日のように泣くことしかできなかった。私は二人目を殺してしまった。今度こそ、そう思ってたのに何も変えることはできなかった。
「お礼なんかいらないから…どうして…どうして死んじゃったの…」
 私はただ啜り泣くことしかできなかった。
 蒼君が死んで一週間がたった。私の涙も枯れてしまった。残ったのは空虚な心。
 帰ってきても迎えてくれる人のいない寂しさ。逢いたかった。置いていかないで欲しかった。
気付くと私は家を飛び出していた。
 蒼君の家。遠い遠い街。私は必死で自転車のペダルを踏み込んだ。
 息があがっても歯を食い縛った。
 蒼君の家の詳しい場所は知らない。けど、何かに導かれるように、ただペダルを漕いだ。
真っ暗になっても私は止まらなかった。
 やがて朝日が昇る頃、私は一件の家に辿り着いた。
 表札には『最上』とそう刻まれていた。
 インターフォンを押すと黒い服を着た少し老けた感じのおばさんがてできた。
「ここは、最上蒼さんのお家ですか…?」
「…どちら様…?」
「織端香澄…私が蒼君を殺しました。」
「そう…。」
 どちらも何もいわなかった。
「入って、お線香でもあげてください。息子もきっと喜ぶわ。」
 私は招かれるまま中に入った。居間に仏壇があった、涙が込み上げてきた。死んじゃったんだ。もう逢えないんだ。こうして改めてみることで実感した。
「沙夜ちゃんの話は聞いてる…?」
「はい…」
「息子はね…あの子が死んでから何をするにも虚ろで毎日毎日つらそうだった…そう、今のあなたみたいだったわ…。」
 私は何も言えなかった。
「私ね、実はそのね沙夜ちゃんって子にね息子に内緒であったことがあるの。本当に貴女に良く似てる…。」
 そう言っておばさんは私の頬にそっと触れた。
「目に宿る光っていうのかしら…それがとっても似てる…。」
「でも…私が…」
「あの子はとっくに勘当してるからうちの子じゃないわよ」
 にっこりと笑いながらおばさんは言った。
「だから貴女は気にしないの…あの子は笑ってる貴女が好きだったんだろうから…一生懸命笑いなさい。それが償いになるから。」
「…はい。」
「親御さんから電話があったわよ。『娘をよろしくお願いします』ってね。だから、早く帰りなさい。」
「ありがとうございました…。」
 私は深々と頭を下げた。
「来る途中に高台にある公園を通ったかしら…?」
「あ、はい…。」
「そこへ着いたら、これを開けなさいな。」
「はい。」
 私は小さな紙袋を渡された。
「お邪魔しました。」
「また、来てくださいね。」
 おばさんはにこやかに見送ってくれた。
 私は言われたとおり高台の公園に着くと紙袋を開けた。中には、紙と小さな指輪が入っていた。
『その指輪は息子の衣服のポケットに入ってた物です。貴女にあげようと思ってたのか、ただ入ってただけなのか今は確かめようがないですが、間違いなくあの子の遺品です。貴女に差し上げます。辛い思い出は全て私がすべて持っていきます。貴女は前を向いて生きてください。息子の救った命を大切にしてください。 最上蒼の母親より』
 読み終わったところで遠くからサイレンの音が聞こえた。
 先程、訪れた家が燃えたいた。『辛い思い出は全て私が持っていきます。』その意味を知った。私は、そのままその公園を後にした。

何日かして新聞で知ったことだが焼け跡からは母親の遺体が見つかったらしい。もらった指輪は私の指にぴったりと合っていたが、私の為の物なのかはわからない。けど、私はもう泣かないから。見つかったから。
 私は十日ぶりの学校に来て真っ先に先生のもとに向かった。
「先生。私、進路決まりました。傷ついた心を癒すカウンセラーになりたいんです。」
 私は笑った。

fin


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