課長と落ちこぼれ君…2-3
…ん…?
相良さんが何か言いたそうな顔でじっと俺を見ている。
「…あ…あのね…
ゴムは、持ってきたから…」
はだけたスーツの内ポケットからコンドームを取り出す相良さん。
どんなツラして買ってきたんだろう…
そんなことを想像すると思わず笑ってしまう。
「ありがたく使わせていただきます」
ズボンを下着ごとおろすと現れる、重力に逆らうそれ。
赤黒いそれは、相良さんに対する欲望の証拠…
ビニールを破き、俺のそれにつける。
男が理性的になる瞬間、だと思ってた。
けど。
相良さんはその瞬間でさえも顔を赤くさせて、俺を待っているような素振りを見せるから。
俺は──
「…ん…んっ!!」
一瞬たりとも、理性的になんかなれなかった。
…お互いの熱が混ざりあえば、もっともっと情熱的で。
「相…良さんっ…俺っ…」
「な…何…?は…んぁっ…」
体液の卑猥な音。
甘い吐息。
シャツから覗く胸。
長い脚。
前に感じた時なんかよりもずっとずっと。
「俺…」
重要な言葉を言おうとするけど。
喋ろうとする口なんかよりも体の方が勝手に動いて──
「うぅっ…」
コンドームの中に思いっきり体液を吐き出してしまった。
課長席にもたれかかり、俺たちは床に座っていた。
行為が終わった後、お互い話そうともしなかったけど、相良さんが突然口を開く。
「あたし、畑中のこと確かに苛ついてたの。
何でこんなに仕事できないんだ、って」
「はは…すみません」
俺はぽりぽりと頭をかきながら苦笑する。
やっぱり形勢逆転するのはセックスの時だけか?なんて思いながら…
「でもね、なぜだか放っておけなかった。
そのうち、私的な気持ちが芽生えてしまって…
周りにはバレバレだったんだってさ。
松本に言われた、わかってないの畑中だけだってね」
言い終わってクスッと笑う相良さん。
って、えぇっ?!
バレバレって…俺知らなかった…
「まあ、畑中があたしに欲情したのは松本にとって予想外だったみたいだけど。
ったく…あいつのお膳立ては本当悪趣味だよね」
「え?!
…あれ…お膳立てだったんスかぁ…
でも、いいんですよ」
「え?」
軽く、相良さんの頬にキス。
相良さんはびっくりしたのか、顔を真っ赤にして目を見開く。
「そのおかげで、相良さんのこと意識しちゃったわけだし」
──いつも怖い顔(失礼)の相良さんに、こんな顔させるのは俺だけだって思っていいですか?
「責任とってくれるってことね」
「もちろん!」
俺はにこりと笑ってそう答えた──