やっぱすっきゃねん!U…@-5
ー9月ー
校舎に生徒達の姿が戻ってきた。クラスメイト同士、お互い少し大人びた変化に話題が挙がる中、
「アンタ…焼けたねぇ…」
尚美と有理は笑いながら佳代に言った。
「だって外だもん。仕方ないよ」
もともと地黒のうえ、夏休み中、日射しの元にいたため、顔はトーストどころかチョコレート色に焼けていた。
「日焼け止めは?」
有理が聞くと、佳代は左手をひらひらと振って、
「あ〜、お母さんに言われて使ったけどダメ。汗で気持ち悪くなるわ、何度も洗わなきゃ落ちないわ…」
その時、後から声が掛かる。
「誰も〈マッチ棒〉みたいなお前なんぞ見てないって」
直也だった。
「誰がマッチ棒だあぁーー!!」
怒りを露にする佳代。対して直也はおどけたように、
「顔だけ黒くて細長い。まるでスッたマッチ棒だ!」
「アンタ!いい加減に……」
その時、担任が教室に入って来た。途端に生徒達は、自分の席へと戻っていく。
担任は壇上からジロリと佳代を見ると、
「澤田、お前の声が廊下まで響いてたぞ」
佳代は、小さく席に縮こまり顔を赤らめた。
「…す、すいません……」
担任は軽く咳払いをすると、他人行儀な口調で語り始める。
「2学期が始まります。2年生のこの時期が中学生活で一番弛んでしまいがちです。しかし、この時期こそ勉強を頑張って下さい。
目標の高校をイメージして……」
高校受験。
高校でも野球を続けたいと思っている佳代。ただ、受験となると遠い先の事としか考えてなかった。
「それから、課題提出は明日まで。それと来週水曜日に実力テストやるからな」
口調を元に戻した担任は、それだけ言うと教室を後にした。
体育館に全生徒が集められる始業式。
校長や教頭の長い話に生徒の誰もが俯き、うんざりといった表情を浮かべている。
「…ふ…ぁ…」
佳代もアクビを噛み殺していた。
(早く終わらないかな…)
しばらくして話が終わると、10人ほどの先生達がステージ上に現れた。