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『碧色の空に唄う事』
【純愛 恋愛小説】

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『碧色の空に唄う事』-6

「…私、口笛なんか吹いてた?」
「してたしてた。かなり」
「ん〜覚えてないね。どんな曲だった?」
「えっとね…なんて言うか…良くわかんないけど、暖かい感じ」
「なんじゃそりゃ。んー思い出せないなぁ…。んあぁ〜ヤバい気になってきた。なに唄ってたんだろ?私こういうの気になりだすと止まらないんだよね」
たぶん、誰だってそうだと思うけど。
「ねぇ、ちょっと唄ってみてよ?どこでも良いし、なんならメロディだけでも」
そう言われた私は、出来るだけ記憶にそってハミングで唄ってみた。
瞬間、千鶴の顔が三回、様変わりする。理解、から納得、そして。
「っあーそれね。わかった、わかった。綺麗なメロディでしょ?それ」
フンフンと首を縦に振る私を見たからだろうか、千鶴は少し申し訳なさそうに小さな声で言った。
「…実はさぁ、私も良く知らないんだぁ。ごめんねぇ。気になって色々調べてるんだけど、全部空振り。どこかで聴いたのは確かなんだけどねぇ…どこだっけなぁ」
言ってから千鶴は首をかしげた。
少しガッカリしたのは事実。結構、知りたかった。
こんな事ですらモヤモヤが募るなんて、本当について無い。
なんか良いこと無いかな。
やる事なす事、悪い方へ転んでしまう。そういう『時期』なんだろうか?

しばらくは何もせずに、のんびりしようと決めた時程、周りは慌ただしく動きだすものだ。これも、そういう面で言えば『時期』が来ているんだろう。
私の周りも半ば騒がしくなって来て「もうすぐクリスマス」を合言葉に求愛活動が盛んに行なっている。あっちこっちでカップルを見るし、その間に流れる空気は確りと『クリスマスプレゼント』を意識していて可笑しい。なんだか戦ってるみたいな感じで、愛しあっている様だった。
――少し。
少しだけ、羨ましくは思う。
私だって、宵との幸せなクリスマスを過ごせたはずだったんだもの。


* * *

もうすぐ、クリスマスだね。
うん、わかってるよ。
そんな悲しい眼をしないで?わかってるから。
僕がクリスマスまでもたないって事ぐらい。
――っはは、皮肉なもんだよね。
18歳のクリスマスも彼女と過ごせずに死んでくなんて。
…そんな悲しい眼をしないでってば…
泣くなよ…仕方ないんだって。
泣くなってばぁ…


* * *

聖なる夜はもうすぐだ。


◆ ◆ ◆

シャンシャンと何かが鳴り続ける音。それが半永久に続くクリスマスソングのエンドレスだと気がついたのは、午後ティーを飲んでからしばらくたった時だった。
商店街が近い私の家では、この季節になるとひっきりなしにクリスマスソングが流れ続ける。それは、確かに子供達には夢見心地の楽園だが、思春期を過ぎた私にはただイラつきを募らせる要因にしかならない物だ。
今日は、聖夜なんて大層な名前が掲げられて、無宗教の恋人達がイエス・キリストの誕生日を祝う、素敵な休日。
私の気分は落ちる一方を辿る。


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