投稿小説が全て無料で読める書けるPiPi's World

『碧色の空に唄う事』
【純愛 恋愛小説】

『碧色の空に唄う事』の最初へ 『碧色の空に唄う事』 0 『碧色の空に唄う事』 2 『碧色の空に唄う事』の最後へ

『碧色の空に唄う事』-1

調子で言えば、最悪だった。
身体はダルく、脳は疲れきっていて瞼は重い。涙で腫れた眼は自分の物じゃ無いみたいに違和感に溢れている。
いい加減に立ち直らなければいけないとは思うのだが、心が言う事を聞いてくれない。
――いつまでウジウジしてるんだよ?しかたないだろ――
ジワリと彼の言葉が浮かび上がり、私はまた泣きそうになる。あっという間に雫は臨界点を過ぎ、私の瞳からは涙が溢れた。
「なんで…?なんでよ…宵…!」
届かない声を張り上げても、虚しくしか響き渡らない私の叫び。

願いが叶うのなら、なんだってするのに。
彼がまた私の隣に戻ってくるのなら、私は命だって賭けられるのに。




『碧色の空に唄う事』

地下鉄を降りてから地上に上がると、明るい陽射しが私を迎え、昨日泣きあかした事が嘘の様に心は弾んで来た。
太陽はとてもご機嫌で、雲一つ無い空は背中を後押ししているみたいで嬉しかった。しかも、今日は少し風があって、ギラギラと光るの太陽熱がこもる身体も、調度良い感じに涼んでいる。
気分転換には持って来いの日和だった。
グーッと伸びをして、日頃出来ない事を今日は思いっきりやってやろうと、小さく気合いを入れた。
お腹に力を入れて、伸ばした手を引きながら息を吐く。それだけで身体の中の不純物が入れ替わったみたいな錯覚を覚える程、気持ち良かった。
「っん〜よし!今日は目一杯休むぞぉ!おーっ!」
一人で掛け声をかけると同時に、私の“本当の休日”が始まるのだった。
本当の意味での“休日”
そう、何もかもをやり直す為に、休まなければいけないのだ。




電車に揺られて5駅、時間で言えば30分程。
私は今、都会に来ていた。
目的は、遊ぶ為。
――いや、違うかな?
目的は、たぶん空っぽにする為だ。

私は最近、半年付き合って来た彼氏と別れた。
細かい事を言うとフラレたのだけれど、今の私には、その現実ですらが重たい。
思いだすだけで涙が溢れてくる。胸の奥が何かで締め付けられ、強大な力を持った何かが思いきり心臓を殴る。頬に雫が伝い、嗚咽を洩らして泣き叫ぶ事になる。
なんで死んだのよ…宵…
――だから私は、この感情に見切りをつける為に、街に来た。
思いっきり、遊んで、騒いで、バカやって。
今日限りでアイツを忘れるつもりなんだ。
一人でブラブラと街中を歩くのはそれだけで楽しい物で、無心に何かを眼で追いかけているだけで、私は宵の事を忘れる事ができる。
今日は久々の“休日”なんだ。
今日ぐらいは楽しみたい。


『碧色の空に唄う事』の最初へ 『碧色の空に唄う事』 0 『碧色の空に唄う事』 2 『碧色の空に唄う事』の最後へ

名前変換フォーム

変換前の名前変換後の名前