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『碧色の空に唄う事』
【純愛 恋愛小説】

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『碧色の空に唄う事』-5

まだ暗い時間帯に、コンビニはまだまだ光々と明るくて、それが私を安心させる訳では無かった。
店内には知らない曲が流れていて、客もまばら。店員も二人しかいない。片方の店員は腑抜けきっていて、もう片方も何処を見ているかわからない。
私は意味も無く近くにあった雑誌を立ち読みし、念入りにグルッと廻ってから、飲み物コーナーで足を止めた。ここはやはり、フルーツオレか。それとも午後ティー?いやいや、コーヒー牛乳も捨てがたい。
そんなどうでもいい事を考えている内に、ふいに、あの歌声が頭に浮かんできた。叫び声に似た、歌声。
5分くらい、ボーッとしていたと思う。たぶん。もしかしたら、もっと長い時間、そこにいたのかも知れない。酷く気持ち良い時間だった。
私は意識のはっきりしない頭をフルフルとふって、結局フルーツオレをとり、レジで支払いを済ませてから店を出た。手に取ったフルーツオレは、冷たかった。

私は手に息を吹き掛けながら来た道を戻り、途中、空を見上げてはフルーツオレを飲んだ。
綺麗な空だったけど、宵との思い出は不思議と思い出さ無かった。




私はいつも流されっぱなしだ。気付くと話が進んでいるなんて事はしょっちゅうで、肝心の私の気持ちは置き去り。
いつも、いつも。
何もかもが出遅れていて、宵が死んだ日も、呑気に本なんか読んでいた。
人にはこの性格が羨ましいと言われるけれど、私自身は恨めしく思う。憎くて、憎くて、憎く過ぎる程に辛い。
――白み始めた空をボンヤリと眺めていると、そんな事ばかりを考えてしまう。 卑怯だ、とは頭ではわかっているのに、心はとどまる事を知らない。
たぶん、心と身体は、全く別のベクトルを歩いているんだ。決して互いを気にせずに進み続けるんだ。きっと。
そうじゃなきゃ、救われない。
そうじゃなきゃ、残酷過ぎる。
そうじゃなきゃ、いたたまれない。


◆ ◆ ◆

通学路を歩く私の足取りは重い。
学校はいつもどおりに進んでいる様で、暗いのは私の周りだけみたいだ。隣では千鶴が楽しそうに口笛を吹いている。
その口笛はどこかで聴いた様な曲で、重要な何かを持っているみたいな気がしてならなかった
「もぅ…元気出しなって。忘れる為に一日遊んだのに、更におちてどうすんのよ」

千鶴は、かけがえのない友達だ。




お昼過ぎに急に思い出した。千鶴が今朝吹いていた口笛の曲の事。
昨日、公園で聴いた歌だ。
なんで千鶴が知っているのだろうか。実は結構有名な曲?
気になりだした思考回路はうずうずしだして、知りたい、ただ知りたいと言う欲望だけが私を包みだす。たまらず私は電話をかけた。
千鶴は快く、来てくれた。

「どうしたの、急に?なんかあった?」
「ううん、たいしたこと無いんだけど。ちょっと気になる事があって」
「ふぅん…で、なに?」
「ん〜、まぁね。今朝さぁ、千鶴が吹いてた口笛の曲、何ていう曲なのかなって思って」
ここで、少しの沈黙。
正直、千鶴が意味不明って顔をしているのは可笑しい。


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