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DEEP DIVER玲那〜闇に沈みし者〜
【ファンタジー 官能小説】

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DEEP DIVER玲那〜闇に沈みし者〜-34

『オ前ニ力ヲ与エヨウ…』
 最初、飛騨には何の事だか分からなかった。その言葉を誰が発したのかも知れなかった。しかし、声の主は飛騨の戸惑いなど意に介さず、言葉を続けた。
『オ前ニ力ヲ与エヨウ。オ前ニ力ヲ与エヨウ。オ前ニ永遠ノ若サト美貌ヲ与エヨウ。我ハとぅもひくお。ちらだノ民ノ守神ナリ…』
 チラダの民の守神と聞き、飛騨ははっとして振り返った。吊り下げられた神人を見やるが、しかし異形の神は沈黙を守ったままである。
「莫迦な、ここまで復活させて、今まで何の生命反応も表れなかったんだ。それが今更…」
 かぶりを振る飛騨。しかし、謎の声はその呟きに応じた。
『ソノ事ニハ感謝シテイル。ダカラオ前ニ力ヲ貸ソウトイウノダ。我ト一体ニナレ。ソウスレバ敵ヲ退ケルコトガ出来ル。ソシテ、我ト共ニ、永遠ノ命ヲ得ルコトガ出来ル…』
 飛騨は驚き、引きつった笑みを浮かべた。神人と同化すると言うことは、神人に、喰われると言うことだ。それでは永遠の命も神の力も意味がない。
『ダカラ魂ヲ共存スルコトガデキル。目ノ前ニ迫ル、オ前ノ敵ノヨウニナ…』
 異国の神は飛騨が無意識に考えたことにまで言葉を返してきた。額に滲む冷や汗を拭い、飛騨はトゥモヒクオと名乗る神の顔を見た。すると、今まで生気の無かった神の死体に潤いが戻り、何処からか心臓の鼓動すら聞こえてくるように思われた。
「ひぃっ!?」
 悲鳴を上げて後ずさる飛騨。しかし、逃げだそうにも背後では竜人となった玲那が人造神人と戦っている。進退窮まった飛騨に、異国の神は告げた。
『ドチラヲ選ブカハ、オ前次第ダ…』
 神の突き放した言い方に飛騨は逡巡したが、迷っている時間はあまりなかった。実のところ呪術で肉体を維持し続けるにも限界が来ている。仮にこのまま玲那に命を奪われないまでも、彼が最も忌避すべき死はすぐ近くまで来ているのだ。
「分かった。受け入れよう…」
 飛騨は神にそう告げた。すると、体中に痛みが走り、飛騨は悲鳴を上げた。体中にナイフで傷を付けられたような鋭い痛みが走る。
「な、何だこれは!?」
 そう言って服を引き裂き、自分の体を見てみると、飛騨の体の至る所に文字が赤く浮かび上がっていた。それが痛みの元凶だったが、傷はますます痛みを増し、浮き出た文字は光を放ち始める。
『サア、我ノ身体ニ触レルノダ!!』

 古代チラダの悪神とそれに対峙する、竜人と化した玲那。トゥモヒクオと名乗る魔神は復活した自分の身体を確かめるように自分の手をじっと見つめると、やがて視線を玲那に移した。
「ちっ!なんて瘴気だ…」
 眉をしかめ、口元を覆う葵。周囲に充満する瘴気は普通の人間ならとっくに死んでいるほどの密度である。
「葵、月狼の防御空間の中へ。いくらあなたが頑丈でもそれ以上瘴気に晒されたら無事では済まないわ」
 離れて様子を見ていた葵に月狼が手を差し伸べる。見ると月郎のもう片方の腕には奈々花がしがみついていた。
「あの光の塊は何です?飛騨先生はどうなったんです?」
 恐る恐る、葵に質問する奈々花。霊位の低い奈々花には神人の姿は光の塊にしか見えないのである。しかし、それが禍々しい光を放っていることは奈々花にも理解できた。
「飛騨?あの男は…光に飲み込まれたみたいだな」
 言葉を濁らせる葵。しかし、奈々花にはそれで十分であった。飛騨が帰らぬ事を感じ取った奈々花は目を充血させ、じっと光を見つめる。
「それにしても、あれが古代チラダの魔神か。こっちの神人と一緒で、あまりぞっとする御面相じゃないな」
 呟く葵。葵には光の中に辛うじて魔神の姿が見えていた。それは人間さながら彫りの深い端正な顔をしていた。しかし体毛は無く、まるで両生類と人間の混合体のようである。額に太短い角が生えており、瞳の形は縦に長いアーモンド型。血の気のない薄い唇の端からは黄色く濁った尖った歯が見え隠れしている。
 相手を威嚇するかのようにぐるぐると喉を鳴らす魔神。それに対し、竜人と化した玲那も低い唸り声をあげて応じる。


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