年の差-4-5
「そんなとこに突っ立ってないで、早く中に入ったらどうですか?…あ、もしかして聞いちゃいました?」
にやけながら言う。
「え…もしかして」
中島の頬がさっと赤くなる。
「あ…聞こえた…」
こっちも照れる。
思わず正直に言ってしまった。
「うそ…」
更に赤くなる中島。
それを見た前川が、
「もう…ハッキリさせようぜ」
と、提案する。
「う、うん…あの…先輩!私、先輩が好きです!」
まくし立てるように早口で言う。
「あ、俺もです」
妙に敬語。
お互い、顔が赤い。
俺は言われた経験があるにも関わらず、初めて告白されたかのような気分になった。
二人照れて向かい合っていると、
「良かったなぁ、悠。先輩も、大切にしてやって下さいよ〜」
と、前川が。
「え、でも、付き合うなんて」
「何、言ってるの?先輩も悠の事、好きって言ったんだよ。付き合わないで、どうすんだよ?」
前川が、当たり前かのように言う。
「中島、俺でいいなら、付き合ってほしい」
真っ直ぐ見る。
中島の顔は湯気が出そうなくらい赤かった。
「…はい」
今まで見た女性の中で1番綺麗な笑顔で、返事をしてくれた。
それからというもの、相変わらず前川を交えて3人でも、遊んだ。
付き合ったのは、悠が初めてだから、全てが初体験だった。
女の子と二人で映画に行くこと。
二人でプリクラを撮ること。
手をつなぐことも。
キスをすることも。
喧嘩することも、仲直りすることも。
体を重ね合わせることも。
全てが初めてだった。
悠は、いつも俺をフォローし、優しくしてくれた。
俺が、機嫌悪くても、
『何があったの?』
って、聞いてくれた。
大学生の時、一人暮らししていた俺を案じて、よく家に来てくれた。
『も〜ちゃんと食べてる?』
と、言って温かいうどんを作ってくれた。
なんで、いつもうどんなの?って聞いたら、
『そばじゃ、陸は太らないでしょ!』
と、必死で太らせるのに精を出していた。
俺は病気じゃなくて、元々の体質が、そうだからしかたない。
それにうどんくらいで、太らない。
でも、そんな彼女が可愛くてしかたなかった。
彼女は高校卒業後、俺と同じ国立大学の理工学部に入った。
俺は経済学部に入っていた。
前川は、また違う国立大学の理工学部に入り、彼女を作ったり別れたりしていたらしい。
大学に入り、お互いに忙しくなったものの、学部は同じキャンパスにあったので、毎週水曜日のランチは一緒に食べた。
その後に講義がないからだ。