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年の差
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年の差-4-6

そんなある日のランチのこと。
『ねぇ…陸、私、大学院まで進むことにしたの』
ごく当たり前の様に話された。
彼女が三回生、俺が就職が決まった四回生の時だ。
大学の食堂はバカ広く、種類もたくさんあった。
今日は和食のA定食を頼み、悠はB定食を。
いつもお互い、違うものを頼む。
悠いわく、お互いに違うものが食べれるから、合理的だとのこと。
ほんと、理系の頭だなぁと、感心する。
『うん、いいんじゃない』
俺は、彼女のことをホントにすごいと、尊敬していた。
あんな男臭い中、実験をし、レポートを出す。
そりゃ、やりたいことがあるなら、応援してやるのが俺の勤めだと思う。
『でも、ここの院には行くつもりない』
きっぱり言い放つ。
『なんで?』
『私がやりたい研究は、篤が通ってる大学で、やっているの』
淡々と話す。
ご飯を口に運び、咀嚼し、再び口を開く。
『そうなんだ』
寂しい。
行くな。
そう、言いたくなった。
でも、言葉に出来なかった。
俺の男のしょうもないプライドからだ。

高校の時は短かった髪も、長くなり、胸の辺りまで伸びていた。
化粧っ気のなかった悠も、大学に入ってからは化粧をし、ますます綺麗になっていった。
たまに甘えるように、腕にほお擦りしたり、ぎゅっと抱きしめる姿が堪らなく可愛かった。
『こうやって、ずっと陸といれたらいいね』
体を重ねた後、いつもそう言う。
本当にそうなりたいと思った。
具体的に言うと、結婚も考えていた。




しかし、『ずっと』なんて言葉が存在しないことを、思い知ることになった。

俺が就職して、もうすぐ一年経とうかとした時だ。
大学から30分ぐらいのところにある大手の電機メーカーに勤めていた。
悠は、大学院を受験し、合格していた。
ただ、院と言っても、前川が行っている大学だった。
前川が一緒なら安心だな。
そう思っていた。


寒いあの日。
飲み会をキャンセルして帰ってきた金曜日。
前川から前日にメールが来た。
『明日、先輩の家にお邪魔させてもらいます』
と。
何かあったのか?
そんなぐらいにしか思ってなかった。

『先輩、お久しぶりです』
家に帰ると、アパートの前で待っていた。
『おう!久しぶり。元気だったか?』
『はい』
前川は相変わらず、格好よかった。
だが、よく見ると髪の毛はねているし、服も見た感じ、ヨレヨレだ。
所々に剃り残したヒゲがあった。
表情も、どこか元気がないように見えた。
『まぁ…家に、入ろうか』
鍵を開け、ドアを開ける。
『いや、ここでいいです。話はすぐ終わるんで。』
『そうか?』
話って何だ?
なんか悩みか?
でも、前川は自力で解決するタイプだ。
『先輩…』
神妙な顔をして、俺を見る。



重い口が開く。





『悠と、別れて下さい』
俺の目を真っ直ぐ見て、言った。


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